政策シンポジウム他

アジア太平洋の安全保障環境

イベント概要

  • 日時:2002年12月18日(水)10:00-16:00
  • 会場:RIETIセミナールーム(経済産業省別館11F1121)
  • 開催言語:英語(日本語同時通訳つき)
  • 主催:RIETI
  • 議事録

    Chung-in MOON (Yonsei University, Korea)

    まず第1に、9.11テロは行動には変化をもたらしたが、構造には変化をもたらしていないということに疑問を投げかけたい。米国の一極構造は冷戦の終焉とソ連の崩壊によってできあがった。そしてアメリカは9.11を重要な契機として一極構造の強化を図っており、その構造が深まっているといえよう。しかし9.11テロ後には、アメリカは自分の味方かそうでないかを問いただすことに代表されるように、明らかに行動を変化させた。このような大国の行動の変化は、構造的な変化を生み出すのではないか。

    2つ目は安全保障のパラダイムについてである。冷戦期には軍事安全保障が何よりも優先された。こういったパラダイムは、冷戦の終焉とともにシフトすることとなった。つまり、人間の安全保障や経済的安全保障、そして環境安全保障といった新しい対象が安全保障の範囲に入ってきたのである。そして、9.11テロ後にはテロリズムが安全保障の中心的な要素となった。しかしこういった状況の中で、人間の安全保障が不必要となったわけではない。むしろ、人間の安全保障が確保されていない状態がテロの温床となることも考えられる。

    Chung-in MOON3つ目は、将来的な見通しについてである。南アジアにおいてさまざまな悲観的な状況が広がっている。また、北東アジア地域においても中国脅威論が唱えられている。しかしながら、こういった障害を乗り越えて協力をしたり、秩序を形成することは可能であろう。地域におけるアイデンティティが確立されれば、共存体制が生まれ、地域の安全保障が確立することとなろう。

    4つ目は、アメリカの行動についてである。アメリカが、9.11以後世界のさまざまな地域に関与をすることとなり、そのことが不安定要因を作り出しているともいえる。アメリカは圧倒的な軍事力を背景として問題を解決しようと試みている。しかし、特に中央アジアや東南アジアにはイスラム教徒が多数存在しており、彼らは強い信念を持っているため、構造的な解決が必要とされている。

    最後に、北朝鮮情勢について触れておきたい。北朝鮮はアメリカを実際の脅威として捉え、対話の場の形成に腐心している。これに対しアメリカは、武装解除や核兵器製造の放棄が先決であるとし、この対話に応じようとはしていない。この状況を打破するには第3者的立場にある国家が必要である。すなわち、日本の役割が拡大しているといえよう。確かに日朝間には拉致事件という大きな障害が存在するが、核問題を含めた幅広い外交関係を構築することにより、そういった問題も解決できるであろう。