追悼

小寺彰先生を偲んで

2001年の経済産業研究所(RIETI)設立以来、長きに渡りファカルティフェローとしてRIETIの研究の発展に大きくご貢献いただいた東京大学大学院総合文化研究科教授小寺彰先生が、去る2014年2月10日に永眠されました(享年61歳)。小寺先生のご逝去に謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

小寺 彰写真 小寺先生のご関心・ご業績は国際法の広い範囲に及びますが、RIETIでは、そのうち通商、投資など国際経済法の分野で数多くの成果を残されています。小寺先生は1995年の設立当時から世界貿易機関(WTO)体制のあり方にご関心をお持ちでした。先生の問題意識は、ドーハラウンドの難航に直面するWTO体制の限界、そしてグローバルガバナンスの中でWTO法と他の政策領域(環境、文化、租税など)との法的関係を研究するいくつかのRIETIプロジェクトに結実し、優れた書籍やDPが生まれています。また、我が国の通商政策の比重がEPA、FTAといった地域貿易協定に軸足を移すと、RIETIの場でもその意義・重要性について多くの情報発信を続けてこられました。我々の記憶にも新しいところでは、交渉中の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、推進のお立場から、マスコミやシンポジウム等で積極的にご発言なさっています。

小寺 彰写真 より最近では、我が国では黎明期にある国際投資法の研究を、小寺先生は文字どおり先駆者としてリードされてきました。RIETIにおける2期にわたる国際投資法のプロジェクトでは、膨大な二国間投資協定(BIT)およびその下での投資家対国家仲裁(ISDS)の判例を整理し、多角的に分析した書籍やDPが刊行されています。これらは我が国国際投資法研究のスタンダード・リファレンスとなる業績です。

小寺 彰写真 RIETIでのご研究では、小寺先生は国際法研究としての理論的枠組みに留意しながらも、常に実務感覚を大切になさっていました。小寺先生のこうした姿勢こそが、多数の審議会、研究会などを通じて霞ヶ関のアドバイザーとして絶大な信頼が先生に寄せられた理由であり、政策研究フォーラムとしてのRIETIには正になくてはならない人材であったことを物語っています。

このページでは、こうした小寺先生のRIETIでの研究活動をご紹介することで生前のご貢献に感謝し、また在りし日のご遺徳を偲ぶことといたします。