企業の中期予測の不確実性:コロナ禍前後の比較

執筆者 森川 正之(特別上席研究員(特任))
発行日/NO. 2024年4月  24-J-012
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概要

本稿は、日本企業を対象に行ってきた独自のサーベイに基づき、新型コロナ前、コロナ危機下、ポストコロナの時期における企業レベルの不確実性に関する観察事実を提示する。企業が直面するマクロ及びミクロの不確実性を、点予測値の主観的信頼区間という形で調査しているのが特長である。その結果によれば、第一に、新型コロナは非常に大きな不確実性ショックだったが、その中期的な期待への影響は企業によって大きな違いがある。第二に、マクロ経済の不確実性とミクロの不確実性は正の相関関係を持っているが、ミクロの不確実性には企業固有の要因が強く影響しており、両者の動きは必ずしも一致していない。第三に、規模の大きい企業ほどマクロ経済の不確実性は低いが、ミクロの不確実性は企業規模と関係がない。第四に、若い企業ほど売上高の期待成長率が高いが、その主観的不確実性も高い。第五に、点予測値の企業間での不一致度と主観的信頼区間で測った不確実性とは動きが異なり、予測のクロスセクションの不一致度を不確実性の代理変数として用いることに否定的な見方を支持している。