COVID-19下における労働供給と配偶関係について(2020年の分析)

執筆者 庄野 嘉恒(コンサルティングフェロー)/菅井 郁(コンサルティングフェロー)/長谷部 拓也(上智大学 / 経済産業省)
発行日/NO. 2021年12月  21-P-021
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概要

本稿は、COVID-19下の労働市場や家計についてのエビデンス蓄積への一貢献を目指したものである。具体的には、配偶関係の視点から、公的統計である労働力調査のミクロデータを用いてクロス集計等による記述的分析を行った。配偶関係については、収入ショックに対してのリスクシェアリング機能がWeiss (1997)等の文献で指摘されており、COVID-19下の経済厚生について考える上で重要な一要素になると考えられる。本稿の主な結果は以下のとおりである。第1に、第1回緊急事態宣言下である2020年4月、5月に非正規女性の休業者数が増加したが、25歳から64歳の現役層における有配偶率は約7割であった。なお、有配偶率については、年齢層別に異なる傾向がみられた。第2に、2020年4月に休業した非正規女性の配偶者の年収層は幅広く、同4月時点の回答で、299万円以下が約15%である一方、700万円以上は約27%であった。無配偶の非正規女性については、COVID-19前において約6割5分が年収200万円未満、約9割が年収300万円未満であり、また一定の仮定の下で推計を行うと、4月に休業した者の平均値(4月回答時)は130万円程度であったと推定される。第3に、2020年3月から4月にかけての就業状態から非労働力人口への移動については特に有配偶の女性が目立ち、女性の就業状態から非労働力人口への推移確率は有配偶者が無配偶者に比べて有意に高かった。第4に、2020年10月にかけての完全失業者の動向については、無配偶男性の増加が目立った。2020年1月からの失業確率の変化を確認すると、男性において無配偶と有配偶で6月以降有意な差が見られ無配偶者の方が高くなっていた。