日本における労働分配率の決定要因分析

執筆者 羽田 翔 (日本大学)/権 赫旭 (ファカルティフェロー)/井尻 直彦 (日本大学)
発行日/NO. 2021年2月  21-J-006
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

日本を含めた先進諸国の労働分配率が低下傾向にある。しかし、これまでグローバル化、産業用ロボットの導入、雇用の非正規化などの影響を考慮して労働分配率低下の要因を実証的に分析した研究は数少なく、労働分配率の上昇に向けた政策的提言を行うための検証が十分とは言えない。そこで、本論文は2006年から2015年における日本企業を対象とした実証分析を行うことで、政策的含意を導出することを試みた。主な分析結果は以下のとおりである。まず、近年において産業用ロボットの導入が労働分配率を低下させている可能性を明らかにした。次に、雇用の非正規化が日本の労働分配率低下に関係している点を明らかにした。輸出、輸入、オフショアリング、輸入品との競争を含むグローバル化の高まりは労働分配率に明確な影響を与えていない。一方、研究開発集約度は労働分配率を高める影響を有している。このような結果から得られる政策的含意として、労働分配率の上昇には研究開発投資の促進、新たな技術開発やその利用を支える高等教育の拡充や労働者の再教育支援、非正規雇用から正規雇用への移行支援などが必要となる。