執筆者 | 石川 義道 (静岡県立大学) |
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発行日/NO. | 2017年11月 17-P-034 |
研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第III期) |
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概要
輸出国で家畜伝染性疾病が発生すると、輸入国は疾病対策として同国全域からの関連産品の輸入を一旦停止するのが我が国を含む各国の一般的な慣行とされる。その後輸入国はSPS協定6条が定める「地域主義(regionalization)」の考え方に従い、輸出国からの輸入解禁要請に応じて危険性評価を実施し、輸出国内の特定地域について病気の清浄性が確認されれば、一定の検疫条件の下で当該地域からの関連産品の輸入を再開することが求められる。本件においてロシアは、2014年1月末にEU域内のリトアニアでアフリカ豚コレラが発生すると、ASF未発生国を含むEU全域からの豚製品の輸入を禁止し、EUからの輸入解禁要請にもかかわらず当該禁止を継続させていたところ、EUが6条を含むSPS協定の諸条項との整合性を争ってWTO紛争解決手続を開始した。近年になって、本件を含め6条を紛争の中心とするSPS案件が続いており(印・鳥インフルエンザ事件、米国・口蹄疫事件)、同条の解釈・適用を巡り先例が積み重なってきている。そこで本稿は本件の検討を中心に、地域主義を定める6条の規律内容がどこまで明確化されてきたかを分析する。