日本における賃金の輸出プレミア:employer-employee dataを利用した分析

執筆者 伊藤 公二 (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2017年8月  17-J-050
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概要

企業がグローバル化で得た恩恵は、最終的に企業で働く労働者に行き届くのであろうか。たとえば、輸出企業の労働者は、輸出を通じて非輸出企業の労働者よりも高い賃金を得ているのだろうか。この点を解明するため、本稿では『工業統計調査』および『経済センサス-活動調査』の事業所データと『賃金構造基本統計調査』の労働者データを接合して2002年と2012年のemployer-employee data(クロスセクション・データ)を作成し、日本の製造業のミンサー型の賃金関数を推計して、輸出事業所と非輸出事業所間の賃金格差(賃金の輸出プレミア)のうち、労働者や事業所・企業の属性で説明できない、すなわち純粋に輸出と相関する部分が存在するかを確認した。

推計の結果、輸出事業所の賃金は、労働者や事業所の属性をコントロールした後でも非輸出事業所よりも高く、輸出と相関する賃金格差が存在した。特に、従業者数300人以下の比較的小規模な事業所において、輸出と相関する賃金格差が顕著であった。さらに、Blinder = Oaxaca 分解 により、輸出の有無とその他の要因が賃金の輸出プレミアに占めるウェイトを計算したところ、標本全体では輸出の有無の影響は輸出プレミアの1割以下を構成するに過ぎなかったが、規模の小さい事業所では30%前後と一定の割合を構成した。

以上の結果より、我が国の製造業では、特に規模の小さい事業所において、輸出と賃金が明確に相関していることが明らかになった。