企業間の共同研究ネットワークはイノベーションの質的パフォーマンスを向上させるか?-世界の大規模データによる国際比較-

執筆者 飯野 隆史 (新潟大学)/井上 寛康 (兵庫県立大学)/齊藤 有希子 (上席研究員)/戸堂 康之 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2017年4月  17-J-034
研究プロジェクト 企業の国際・国内ネットワークに関する研究
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概要

世界的な特許データを用いて、企業間の共同出願を共同研究とみなし、国際的な共同研究の特徴について国際比較を行った。さらに、企業間の共同研究ネットワークを介した知識の伝播が、企業のイノベーションの質的パフォーマンスに及ぼす影響について分析した。このとき、ネットワークにおける各企業の位置関係を、ネットワーク科学で用いられるさまざまな指標を導入したところが本研究の特徴である。その結果、日本は他の国に比べて共同研究を行う傾向が高いものの、他国企業との共同研究は少なく、国内で密な共同研究関係を形成していることが明らかとなった。しかし、グループ内で密につながっていることは、日本企業がイノベーションの質を向上させているという証左は見当たらず、日本企業のイノベーションの質の向上に効果的なのは、グループ間を橋渡しする多様なつながりを構築していることである。

これは、アメリカ企業がさまざまなタイプのつながりから恩恵を受けているのと対照的であり、日本を含めた多くの国で共同研究を通じた知識伝播によってイノベーションの質的パフォーマンスを向上させるのが容易でないことを示唆している。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:18-E-070