政府への財政的依存が市民社会のアドボカシーに与える影響 ―政府の自律性と逆U字型関係に着目した新しい理論枠組み―

執筆者 坂本 治也 (関西大学)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-036
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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概要

本稿は、補助金収入や委託事業収入といった政府からの公的資金収入に財政面で依存することが市民社会組織によるアドボカシー(政策提言、唱導)にいかなる影響を及ぼすのかについて、日本の事例を題材に検討を加える。

政府への財政的依存とアドボカシーの関係についての先行研究では、「政府への財政的依存がアドボカシーに悪影響を与える」とする「悪影響」説と、むしろ逆に「好影響を与える」とする「好影響」説が併存する形で存在しており、議論が収束していない。

本稿では、既存の研究が見落としてきた、「市民社会組織に対する政府の自律性の程度」と「政府への財政的依存がアドボカシーに与える非線形的影響」という2点に着目することにより、新しい理論枠組みを提起したい。本稿が理論上の仮説の検証に用いるのは、独立行政法人経済産業研究所が実施した平成26年度「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」のデータである。この包括的なデータを用いることにより、より普遍的な知見がもたらされることになる。

定量的分析の結果、1)政府の自律性の高低によって政府への財政的依存がアドボカシーに与える影響の方向性は異なること、2)政府への財政的依存は、ある一定レベルまではアドボカシーに好影響を与えるが、一定レベルを超えると逆にアドボカシーに悪影響を与えるようになる、という逆U字型の影響をアドボカシーに与えること、が明らかとなる。