高成長期における台湾経済の需要構造

執筆者 湊 照宏 (大阪産業大学)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-027
研究プロジェクト 経済産業政策の歴史的考察―国際的な視点から―
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概要

1960年代から1970年代における台湾経済の高成長については、その資源配分メカニズムをめぐって市場主導仮説と政府主導仮説との間で論争が展開されてきた。市場メカニズムが機能して輸出拡大を招いたという前者の見解に対し、後者は政府管理下の投資が成長を主導したという見解であった。本稿は、以上の2つの仮説を需要構造から検討することを目的とする。先ず、高成長期における台湾の産業構造や需要構造といったマクロ経済の推移を概観したうえで、各支出項目の実質GDP成長率に対する寄与度の推移を確認する。次に、主要産業と判断される繊維産業と電子機器製造業の発展に影響を与えた政策について考察を加える。以上の検討から、外需拡大が雇用吸収を促して民間消費を拡大した一方で、外需拡大が設備投資も促進して機械輸入を増加させていた需要構造を描き出す。