1950年代の日本における設備近代化と生産性:鉄鋼業における「産業合理化」

執筆者 岡崎 哲二 (ファカルティフェロー) /是永 隆文 (専修大学)
発行日/NO. 2015年12月  15-J-064
研究プロジェクト 産業政策の歴史的評価
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概要

1950年代の日本経済は、戦前・戦時期から継承した設備の老朽化が進む中で、市場経済化と単一為替レートの設定にともなう国際競争の再開という課題に直面した。この状況下で通産省は、基幹的政策として「産業合理化」政策を実施し、その中心的な目標を鉄鋼・電力など主要な産業の設備近代化に置いた。この論文では、鉄鋼業に関する建設年別設備データをプラント別に構築し、あわせてプラント別の投入・産出データを整備することによって、1950年代における設備ビンテージの変化と設備ビンテージが生産性に与えた影響を検証した。対象としては、鉄鋼設備近代化の中心的対象とされた圧延設備(熱間圧延設備)に焦点を当てた。その結果、1950年代に圧延設備のビンテージが大きく低下したことが確認されるとともに、生産関数の推定を通じてビンテージの低下が生産性を向上させたことが明らかになった。また、鉄鋼合理化計画における主要な政策手段の1つとされた日本開発銀行融資について平均トリートメント効果を推定した結果、設備能力の増加と設備ビンテージの低下について有意にプラスの効果を与えたことが確認された。