公的研究機関のイノベーションプラットフォームとしての役割:TIAナノの事例研究

執筆者 元橋 一之 (ファカルティフェロー) /カン・ビョンウ (アジア経済研究所)
発行日/NO. 2015年10月  15-P-014
研究プロジェクト 日本型オープンイノベーションに関する実証研究
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概要

TIA(Tsukuba Innovation Arena)ナノは、ナノテクノロジー分野における官民のイノベーションプラットフォームとして設けられた組織である。特定の運営組織を設けるのではなく、産業総合研究所など筑波学園都市に設置された公的研究機関や大学によるバーチャルネットワークとして運営されている。本稿では、カーボンナノチューブ(CNT)とパワーエレクトロニクス(SiC半導体)に関する活動に関する事例研究を行い、公的研究機関のイノベーションプラットフォームとしての役割について政策的なインプリケーションを導出した。産総研は2001年の独立行政法人化によって、産業界との連携を深め、これらの技術分野においてもイノベーションネットワークの中心的な役割を担うようになったことが分かった。ただし、CNTとSiCのイノベーション特性の違いによって、産総研がイノベーションプラットフォームとして担う役割は異なる。CNTについては、幅広い産業におけるイノベーションの源泉となる技術(General Purpose Technology)として、オープンな材料の提供や知財政策を展開することが重要である。その一方で、SiCは、パワーエレクトロニクス製品を巡る関連産業のコーディネート役が重要となるので、個々の企業における製品化インセンティブとプロジェクト全体の効率性のバランスを考えたプロジェクトマネジメントが必要となる。

Published: 元橋 一之 ・姜 秉祐, 2016. 「公的研究機関のイノベーションプラットフォームとしての役割:TIA ナノの事例研究」, 『研究技術計画』 Vol. 31(2), pp. 236-247