経済成長政策の定量的効果について:既存研究に基づく概観

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2015年2月  15-P-001
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概要

成長戦略の重要性が指摘されているが、経済成長率に対してどのような政策がどの程度の効果を持つのかが数字で示されることは少ない。本稿は、成長政策として頻繁に取り上げられる政策分野を中心に、統計データや内外の既存研究に基づいてそれらの定量的な効果を分野横断的に概観する。本稿で強調するのは次の諸点である。第1に、経済成長に対して量的に大きく寄与するのは、人的資本の質の向上やイノベーション力といった産業横断的なファンダメンタルズの改善である。ただし、これらが効果を発揮するには時間が必要である。第2に、成長政策を議論する際、成長率を低下させる要因を特定し、それらによる負の影響を小さくすることも重要である。第3に、マクロ経済の安定化や企業・家計にとっての政策の不確実性の低減が成長力を高める上でも望ましい。本稿は、政策実務に役立つことを目的にユーザーの視点から大胆に整理したものであり、あくまでも、おおよそのマグニチュードを理解するためのベンチマークという位置付けのものである。各方面からコメントや批判をいただき、改善を図っていきたい。