教育財政の資金配分の在り方(教育財政ガバナンス)に関する考察-教育段階を超えた視点も考慮して-

執筆者 赤井 伸郎  (ファカルティフェロー) /末冨 芳  (日本大学) /妹尾 渉  (国立教育政策研究所) /水田 健輔  (東北公益文科大学)
発行日/NO. 2014年2月  14-J-009
研究プロジェクト 財政的な統一視点(財政制約下の最適資源配分)からみた教育財政ガバナンス・システムの構築
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概要

少子高齢化の進展により労働力人口は減少する中で、成熟化した日本が、将来に渡る経済成長を持続するためには、日本国民それぞれの知識レベル・生産性の引き上げが急務である。これらを踏まえると、学校教育を通じた人的資本の蓄積および、その目的に向け限られた資金を有効に活用することが不可欠となっている。これらを実現するためには、現在・将来の資金の流れを透明・明確にし、説明責任・透明性を持った教育ガバナンス・システムの下で、効果的・効率的・公平的な教育財政制度(財政制約下の最適資源配分)を設計することが、最重要である。しかしながら、資金の流れに着目した教育財政分析の視点や、教育段階を超えた視点からの研究は、管見の限り、ほとんど見当たらない。そこで、本研究プロジェクトでは、これらの2つの視点を考慮して、経済成長を促す人的資本構築のための公教育負担の在り方に着目した研究を行った。本研究で行った幅広い研究から得られた政策的示唆は、以下の通りである。

(1)経済成長を高めるのに教育投資は依然として有効な政策であるとともに、高校レベルや高等教育の段階の修了者数への投資に着目することが望ましい。

(2)確実に教育政策を行っていくためにも、学校の特性を考慮した将来の財政負担を明確にし、財政負担の準備を行っておくことが重要であり、また、地域間格差の考慮も重要である。

(3)教育成果の向上のため、学校予算の財源保障が重要である。

(4)人的資源への資金配分を伴う教育財政ガバナンスが重要である。