未病うつ(Non-clinical depression)に対する低強度メンタルヘルス・サービスにおける積極的な民間活力導入の提案:趣味を実益に変えて、医療負担から戦略的事業へ

執筆者 宗 未来  (ロンドン大学キングスカレッジ) /渡部 卓  (ライフバランスマネジメント研究所)
発行日/NO. 2014年1月  14-P-001
研究プロジェクト 人的資本という観点から見たメンタルヘルスについての研究
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概要

軽度の抑うつ症状を呈するものの診断基準は満たさない未病うつ(non-clinical depression)の存在が懸念されている。近年の疫学研究からは軽症うつの経済的損失は大きく、将来のリスクも無視できないため、介入の重要性が叫ばれている。しかし、未病うつは、精神医療では健常者と扱われる一方、既存の民間サービス業からは距離を置かれがちで、いわゆるグレーゾーンとして、エビデンスに基づいた対応をサービスユーザーがうけられる機会が乏しかった。

本稿では、積極的な民間活力の導入によって未病うつに対する低強度介入型メンタルヘルス・サービスを我が国において推進する可能性を探るため、民間療法やCAM(補完・代替療法)などの非侵襲的な介入がうつに及ぼす効果について、6産業(フィットネス、健康食品、IT、観光、スパ・サービス、教育)を取り上げて、先行研究の文献レビューによって、エビデンスの裏付けがどの程度あるかを検証し、次の結論を得た。

フィットネス産業とIT産業については十分なエビデンスがある。健康食品については潜在性は高い一方で大量摂取などのリスク管理の必要性がある。観光産業とスパ・サービス産業については、現段階においてはエビデンスが相対的に弱く一層のエビデンスの充実が課題である。教育産業については、魅力的な教材を作ってわかりやすく教えるノウハウや、通信教育などの独自のチャネルなどから、未病うつ関連サービスへの参加意義は大きい。