スウェーデンの財政再建の教訓~経済成長と両立する財政再建がなぜ可能だったのか~

執筆者 翁 百合  (日本総合研究所)
発行日/NO. 2013年5月  13-J-032
研究プロジェクト 経済成長を損なわない財政再建策の検討
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概要

わが国では、財政再建と経済成長の両立がきわめて重要な課題となっている。90年代以降その両立に最も成功したスウェーデンは、90年代初頭の金融危機の後、本格的な財政再建に取り組み、主に社会保障給付を中心に行った歳出削減の成功が財政赤字縮小に結びついた。また予算決定プロセスや財政フレームワークを改革し、景気循環にあわせて無理なく財政赤字を縮小するためのルールが形成されたことも、財政再建を持続的なものとした。スウェーデンの財政再建が成功したのは、為替相場の大幅減価による輸出増加と企業のIT導入等に伴う生産性の向上が持続し、経済成長と両立できたことが大きい。わが国としても、景気に深刻な影響を与えないように財政再建を進めつつ、自由貿易協定締結などを積極的に進めること、長期的に労働生産性を引き上げる努力をしていくこと、立地の魅力を高め長期的な輸出基盤を残しておくこと、質の高い投資を行っていくことなどが、財政再建と経済成長の両立のために重要である。