執筆者 | 後藤 康雄 (コンサルティングフェロー) |
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発行日/NO. | 2013年5月 13-P-009 |
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概要
2008年のリーマンショックを契機に世界経済は大きく落ち込み、その後も混乱が続いている。本稿は、グローバルな貿易・資金フロー等をやや長い目で俯瞰し、わが国および企業部門がどのような状況にあったかを、金融経済危機との関連を念頭に置きつつ、振り返って整理するものである。
今回の危機を説明する代表的な仮説として、中国などの過剰な貯蓄が原因とする「グローバル・インバランス(GI)」仮説と、米国などの過度な金融緩和を主因とみる「過剰流動性(EL)」仮説があるが、これらに基づいて世界的な状況を整理すると、わが国は危機を促す側ではなく巻き込まれる側であった可能性が高いように窺われる。企業部門の動向をみても、輸出依存度の上昇は輸出ドライブの強化というより実効為替レートの減価を背景としており、ISバランスについても過剰貯蓄というよりバブルの反動による投資減退の影響が大きく、わが国がGI仮説に沿った動きをしたとはいいにくい。
ただし、両仮説のメカニズムは事象として重なる部分が大きく、慎重な見極めが必要である。わが国としては、中立的な立場から事態の正しい把握に努め、あるべき施策への積極的な発信に努めていくべきである。