最低賃金と地域間格差:実質賃金と企業収益の分析

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2013年3月  13-J-011
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本稿は、(1)物価水準の違いを考慮した実質最低賃金の地域差について統計データに基づく観察事実を整理するとともに、(2)都道府県別の実質最低賃金が企業収益に及ぼす影響を実証的に分析する。2007年以降、大都市圏を中心に最低賃金の引き上げが急速に進められてきた結果、名目最低賃金の地域間格差は拡大傾向にあるが、物価水準の地域差を補正した実質最低賃金の格差は逆に縮小している。企業のパネルデータを用いた推計によれば、最低賃金が実質的に高いほど企業の利益率が低くなる関係がある。また、最低賃金の企業収益への負の影響は、平均賃金水準が低い企業やサービス業の企業で顕著である。本稿の結果は、最低賃金が過大な水準に設定された場合、地域の経済活力に対してネガティブな影響を持つ可能性を示唆している。