日本企業の本社部門の立地について:本社移転の決定要因と生産性による選別

執筆者 松浦 寿幸  (慶應義塾大学産業研究所)
発行日/NO. 2012年7月  12-J-022
研究プロジェクト 我が国の企業間生産性格差の規定要因:ミクロデータを用いた実証分析
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概要

本論文の目的は、企業の本社の集積に注目し、どんな企業がどういった地域に立地するかを明らかにするものである。本研究の意義は、2つある。第1は、本社の立地、あるいは移転要因を明らかにし、企業の本社を誘致するためにはどんな施策が有効であるかを探ることである。企業の立地は、工場の立地を中心に多くの研究が行われているが、本社の立地については、研究例は数少ない。本社は、企画や研究など、企業の高度な意思決定に伴うさまざまな問題に取り組む部署を抱えているので、多くの本社が立地する地域では熟練労働者の雇用機会の拡大、ビジネス・サービス業の需要の拡大などが期待され、その誘致は政策的な意義が大きい。第2は、都市と地方の生産性格差の発生原因を明らかにすることである。都市と地方の間には生産性に格差があり、その要因については、さまざまな研究者が分析を行なっている。既存研究では、産業集積や他の企業からのスピルオーバーの重要性などが指摘されているが、企業の移転や自己選抜なども重要な要因である。本研究では、生産性の高い企業と低い企業の本社の移転パターンを調べることにより、地域間生産性格差における移転・自己選抜機能の意義について示唆を与えるものである。