ビールと発泡酒の税率と経済厚生

執筆者 慶田 昌之  (立正大学)
発行日/NO. 2012年6月  12-J-019
研究プロジェクト 日本経済の課題と経済政策-需要・生産性・持続的成長-
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概要

本稿では、近年ビール系飲料として販売されている発泡酒の登場によって発生している経済厚生上のロスを定量的に評価した。節税ビールである発泡酒は、品質が低いにもかかわらず課せられている税率が低いことによって需要が発生している。もし、 同一の税率の下ならば価格優位性がなく需要がない可能性がある。このような商品は限界費用と異なる価格のために、資源配分を歪めてしまい、経済厚生を引き下げていると理解される。

この問題を定量的に評価するために、標準的なCES型効用関数を仮定し、POSデータを用いてビール系飲料の需要の価格弾力性を推計した。その結果、需要の価格弾力性は4.3程度であることが分かった。

この結果に基づくと、ビール系飲料として発泡酒が販売されていることの経済厚生上のロスは2400億円程度の規模をもつと推定される。このことは、事前の意味で税制の整合性を図ることの重要性を示唆し、また、複雑な税制を改めることの価値を見出す結果であるといえる。