有期労働契約法制の立法課題

執筆者 島田 陽一  (早稲田大学)
発行日/NO. 2011年4月  11-J-060
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

有期労働契約法制の立法改革が目前に迫るなかで、厚生労働省が組織した「有期労働契約研究会」の報告書を踏まえて、有期労働契約に対する労働需要が一時的臨時的なものだけではなく、むしろ中長期のものが大きいことを踏まえて、有期労働契約法制に対する過度な規制を回避すべきであるという立場から、立法課題を具体的に検討する。有期労働契約の利用を強く規制する立場からは、労働契約の無期原則が主張される。しかし、それは、労働契約そのものに内在する原則ではなく、雇用安定の視点からの政策的主張に過ぎない。無期原則は、現在の日本の雇用慣行における有期労働契約者の利用を大きく制約し、その変更を迫る主張を含む。しかし、企業の中長期的な労働需要をどのように満たすのかという視点を欠いて、有期労働契約の立法規制を行うことは適切な法政策とはいえない。中長期の労働需要を担う有期労働契約者をこれまでどおり認めることを前提として、適切な範囲での保護を与えるのが法政策の当面の課題である。具体的には、有期労働契約の締結時および更新時に当該有期労働契約の更新可能性を明示し、更新可能性がある場合の雇止めについては、その理由に客観的合理性および社会的相当性を求めることを立法化すべきである。