水産エコラベリングの発展可能性―ウェブ調査による需要分析

執筆者 森田 玉雪  (山梨県立大学) /馬奈木 俊介  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2010年7月  10-J-037
研究プロジェクト 水産業における資源管理制度に関する経済分析
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概要

水産エコラベリングは、持続可能な漁業を行う漁業者の水産物を他の漁業者の水産物と差別化する制度である。この制度が機能すれば、消費者はラベル貼付水産物を選択的に購入することで、水産資源保護に参画できるようになる。漁業者も、安定的な需要の増加という見通しを得られれば、短期的な漁獲量の削減などの資源保護に伴うコストを受け入れ、資源保護へ積極的に取り組むことができる。イギリス・北欧など海外ではすでに成功裡に普及している水産エコラベリング制度も日本では未だ緒に就いたばかりである。普及が遅れている要因としては、水産資源の危機的状況に対する日本の消費者の認識が海外と比較して相対的に低いこと、数多の虚偽表示問題などの経験からラベルに関する信頼度が低いことなどが考えられるが、それらを正確に分析した研究は少ない。本論文では、ウェブ調査を用いて、水産エコラベルに対する潜在需要を計測すると同時に、消費者の水産資源に関する認識度とラベルに対する信頼度も併せて調査し、水産エコラベリング制度が普及しにくい要因を明らかにし、日本の消費者に信頼され得るラベリングのあり方を提示する。