執筆者 |
橋本 由紀 (東京大学大学院 / 日本学術振興会) |
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発行日/NO. | 2010年2月 10-J-018 |
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概要
外国人研修・技能実習制度については、途上国の外国人を実質的な低賃金労働者として利用することで労働力を充足し、市場から退出して然るべき低生産性企業の延命装置として機能しているのではないか――との批判がしばしば聞かれる。しかし、制度を利用する個々の企業の実態はほとんど明らかでなく、こうした批判の妥当性は、事例調査や実証分析によって慎重に検討されなければならない。
本稿では、実習生等を活用する企業が日本人従業員に対して提示するオファー賃金の水準に着目し、非活用企業の同賃金と比較することで企業間の生産性格差を測定し、制度を利用する企業の特徴が明らかにされた。
実証分析の結果、製造業では、実習生等活用企業の日本人従業員に対して支払う賃金が、同業・同一地域に立地する非活用企業よりも低い傾向、すなわち賃金競争力に劣る企業が制度を利用する傾向が強いことが確認された。一方、非活用企業の平均賃金以上の賃金を提示する活用企業も約30%あり、これらの企業では実習生等と日本人従業員とが効率的に業務を分担することで高い生産性を達成している可能性が示唆される。