日本人の労働時間-時短政策導入前とその20年後の比較を中心に-

執筆者 黒田祥子  (東京大学)
発行日/NO. 2010年2月  10-P-002
ダウンロード/関連リンク

概要

日本人の労働時間は、時短前に比べて短くなっているのだろうか。本稿は、この疑問に答えるべく、日本人1人当たりの平均労働時間の時系列的推移を観察したものである。

『社会生活基本調査』(総務省)の個票データを用いて、高齢化、高学歴化、有配偶率の低下、少子化、自営業率の低下等、人口構成・ライフスタイルの変化を調整した結果、時短導入前の1986年と導入20年後にあたる2006年の日本人有業者1人当たりの週当たり平均労働時間は統計的にみて有意に異ならないとの結果を報告した。この傾向は、雇用者1人当たりでみても、フルタイム雇用者1人当たりでみても、男女別でみても同様である。さらに、フルタイム男性雇用者にサンプルを絞って、より詳細に時系列の推移をみると、週当たり平均労働時間は1986年と2006年の2時点を比較して統計的に有意に異ならないものの、週休2日制の普及により、土曜日の平均労働時間は低下した一方、平日(月-金)1日あたりの労働時間は、過去20年間で趨勢的に上昇していることも分かった。つまり、1986年以降のフルタイム男性雇用者の週当たり労働時間が統計的にみて不変と観察された背景には、週末の労働が平日にシフトし、結果として平日と土日で労働時間が相殺されている可能性が考えられる。また、平日の労働時間が延びたために、日本人は趨勢的に睡眠時間を削減していることも分かった。