労働時間改革-鳥瞰図としての視点-

執筆者 鶴 光太郎  (上席研究員)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-014
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概要

日本における長時間労働は過去20年程度の間、より深刻化しているとはいえないものの、改善もないのが現状である。長時間労働の問題を考える場合、金銭インセンティブや出世願望などが影響している「自発的長時間労働」と労働市場における買い手独占、企業内コーディネーションによる負担、雇用調整のためのバッファー確保などの企業側の論理を反映した「非自発的長時間労働」とに分けて考える必要がある。長時間労働の原因が非常に多様であることを考慮すると、労働時間の規制は、まず健康確保を基本とすべきであり、さらに個々の労働者の希望をきめ細かく実現していくためには、円滑な労使コミュニケーションを活用した分権的枠組みによる解決が重要である。具体的な労働時間規制改革の方向性としては、ヨーロッパでもみられるように、割増賃金などの金銭補償から休日代替へ移行させるとともに、労働時間規制の例外措置である適用除外や裁量制について、対象者の範囲など労使協定で柔軟で定めながらも、使用者の恣意的運用を防ぐため行政官庁への届け出を義務化させ、既存の制度を整理・統合化するべきである。