集落営農が稲作の生産および費用に与える影響-大規模稲作経営のシミュレーション分析-

執筆者 齋藤 経史  (文部科学省 科学技術政策研究所) /大橋 弘  (ファカルティフェロー) /西村清彦  (日本銀行)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-009
ダウンロード/関連リンク

概要

本論文では、農林業センサスを用いて2000年の42府県において、約192万戸の稲作農家に代わって約12万の農業集落が実質的な経営単位として機能した場合に、稲作の生産や費用に与える効果を定量的に評価する。サンプルセレクションおよび区間形式のデータに対応した手法を用いて、稲作の生産関数を推定し、シミュレーションを用いて、集落営農による大規模稲作経営の効果を分析する。

分析の結果、2000年において5.04兆円を費やしていた稲作の生産費用(機会費用を含む)は集落営農による大規模経営を行うことによって1.97兆円へと約61%削減できることが分かった。また、2000年の個別農家による生産では、約1.5%の農家しか採算がとれていないが、集落内で上位10%の生産性を持つ農家が集落営農を主導すれば、約11%の農業集落にて採算がとれることが明らかとなった。集落営農は、我が国の稲作の赤字構造を包括的に解決するわけではないが、収益性を大幅に改善することが示された。