社会保障財源としての税と保険料

執筆者 岩本 康志  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2008年7月  08-J-034
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概要

本稿は、社会保障制度の財源調達手段として、保険料と税の選択の問題を検討する。

現在の財源構成の実態を概観すると、保険料負担が限界にある社会保険方式に税財源が投入されている構図があり、明確な理念に基づいて保険料と税の役割分担がされているわけではない。税財源の投入が高齢者に偏っていることから、今後の高齢化の進行によって公費負担の伸び率が保険料負担の伸び率を上回ることになる。現行制度のもとで、歳出・歳入一体改革の期間後に2025年にかけてGDPの1.5%弱の公費負担の増加が予測され、さらに2025年から2050年にかけて2%程度の増加が予測される。その財源調達が課題である。

基礎年金を税方式化するという選択は、社会保険を運営する能力を政府がもたないという判断に立脚する。その大きな問題は、国民年金の未納問題である。ただし、税方式への移行は過去の未納問題の解決にはならない。一方で、民間でできることを普通にできるという前提で制度設計すれば、年金は社会保険方式で運営できるものと考えられる。最終的な判断は、経済理論だけでは明確にできない。

税方式の財源として消費税を考える場合は、年金改革の議論のように見えて、実際は税制改革の側面が重要である。社会保険料は賃金税の影響とほぼ同一視して考えることができるので、賃金税から消費税への移行として議論することができる。すでに保険料を払った世代は消費税の負担があらたに発生することから厚生が悪化するが、将来の世代は貯蓄の増加から経済厚生が改善するものと考えられる。世代内の所得再分配はより強められる。