消費者政策と市場の規範―悪質商法や製品安全に関係する文献から抽出した経済社会の発展経路―

執筆者 谷 みどり  (上席研究員)
発行日/NO. 2008年5月  08-P-003
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概要

消費者問題、消費者政策に対する関心が、最近増大している。しかしこの分野では、既存文献の学際的なサーベイはなく、理論と最新の政策にまたがる資料も不足している。そこで、取引方法の問題と財の品質問題に大きく二分できる消費者問題の代表例である悪質商法と製品安全にかかわる政策を対象として、これらに関係する文献と日本の政策関連資料を調査した。

まず、消費者問題の原因として、従来の見方より幅広い「市場の規範が弱まっている」という見方を支持する文献・資料を提示する。また、市場の規範に「強制する規範」、「経済社会の圧力で守る規範」、「良心で守る規範」が存在することを示し、市場の規範の構築法について各種の文献から共通項を抽出する。更に、市場の規範の観点から効果が期待できる消費者政策の例を、既存の政策と検討中の政策から示す。

これにより、消費者政策は、消費者と事業者の一般的な対立構造を想定して政府がどちらの肩を持つかという観点で考えるべきではないと論じる。消費者、事業者、政府のすべてが市場の規範を構築、維持する役割を果たすことにより、経済社会全体の発展、安定を確保するという観点から検討することを提案する。