制度変革期における組織に対する成員の意識
-国立試験研究機関から独立行政法人への移行期の事例より-

執筆者 藤本昌代  (同志社大学社会学部社会学科)
発行日/NO. 2005年11月  05-P-004
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概要

本稿は独立行政法人化された旧国立試験研究機関(以後、A研究所と呼ぶ)の成員への組織に対する意識調査の結果をまとめたものである。2001年4月行政改革の一環として多くの国立試験研究機関が独立行政法人化された。現在では大学も独立行政法人化(国立大学法人)され、社会的にも徐々に認識されつつあるが、当時は独立行政法人化されることが組織にどのような変化をもたらすのか誰しも予測の範囲を超えることはできず、期待と不安の中、新制度が発足した。これまで国の組織として「公」の立場で職務を果たしてきた研究機関が、公と民間の中間に位置する機関として定められ、国の機関に適用されてきたルールから民間の機関に適用されるルールへの移行や主務官庁との関係の変化など、従来の仕事の進め方とは異なる方式が採用されることになった。本調査の対象となった研究機関は、産業活性化の担い手として経済効果を高めるような研究成果、およびその運用を期待され、国の機関であった時代に重点化されていた基礎的な研究だけでなく、産業界と連携して事業化に展開する研究も強く期待されるようになった。本稿では当時、新制度発足と同時に、どの独立行政法人よりも大幅に組織構造を再編し、新しい組織作りに取り組んだA研究所の改革が組織成員にどのような影響を与えたかということについて検討を行うものである。この研究は制度変革期の組織と個人の関係、組織と社会との関係を継続的に分析するものであり、定点観測によりその変化を通時的に比較することを目的としている。したがって、本稿は2001年冬からのインタビュー調査、2002年のアンケート調査当時の情報を分析しているものであり、定着期を迎えている現在のA研究所の状態を示すものではない。