イノベーションと組織・経営改革

執筆者 三本松 進  (上席研究員)
発行日/NO. 2005年3月  05-J-003
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概要

今回の研究は、日本企業の知識経済化時代のイノベーション戦略と組織・経営戦略策定、更には人材育成の方向についての視座を提供したいとの基本認識でスタートした。このため、90年代後半以降、グローバル経済化、基盤技術のデジタル化、通信技術のインターネット化の影響を最も強く受けた電機産業を産業の代表として分析の対象にした。電機産業内企業において見られた複雑なイノベーション活動と組織・経営改革の状況を統一的に分析するため、まず、企業の組織能力の内、「組織的イノベーション能力」と「組織的管理運営能力」の概念化に取り組んだ。次に、得られた両能力の概念をそれぞれの企業活動の大まかな全体プロセスの中で、両能力を位置付けて記述した「全体フレーム」を策定し、この「全体フレーム」をベースに、電機産業内の先進企業3社の事例でケーススタディーを行った。

この結果、この「全体フレーム」で、これら3社の90年代後半以降の複雑なイノベーション活動と組織・経営改革の状況が能力概念の範囲内ではあるが概ね説明でき、両能力の概念化の妥当性が概ね確認できた。今回の研究は今後の本領域での本格的な研究に向けた第一歩であり、関係方面の今後の研究の参考になれば幸いである。

今回の研究過程で明らかとなったが、日本企業のこれら組織的イノベーション能力と組織的管理運営能力の持続的な構築を図るためには、企業内のイノベーション人材、経営人材の育成に努める必要があると考えている。政府の17年度税制改正において、「人材投資促進税制」が実現の方向にあり、これが望まれる。