情報化が正規労働比率へ与える影響

執筆者 砂田 充/樋口美雄  (ファカルティフェロー) /阿部正浩  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年11月  04-J-043
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿では、『企業活動基本調査』の個票資料を利用して、企業の情報通信技術の導入が雇用構造、特に正規・非正規労働にどのような影響を与えているのかを分析した。まず、『企業活動基本調査』でパート比率の動向を観察すると、製造業では、企業内のパート比率は緩やかに高まっている一方で、パート比率の高い企業の従業者数は同産業内の他社と比べて少ない傾向にある。これに対し、小売業では各企業内のパート比率が急速に高まってきているのと同時に、パート比率の高い企業の産業内の従業者シェアもやはり急速に高まってきている。結果として、集計レベルのデータと同様に、小売業全体のパート比率はかなり高い伸びを示している。また、新古典派生産者モデルから回帰式を導出し、正規・非正規労働間の代替関係を考慮した上で情報化が正規労働比率にどのような影響を与えているのかを検証した。それによると、機械製造業以外の産業についての結果は情報化の進展が正規労働節約的な技術変化である可能性を示唆するものであった。このことは、企業の情報通信技術の導入が企業の業務をデジタル化したり、社内の情報処理システムを変化させたりする結果、社内業務に精通し、組織内に人的ネットワークを構築してきた正規従業員の優位が弱まるかもしれないことを示している。