米国大学の国際的競争力の源泉

執筆者 寺澤 達也  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2003年11月  03-P-005
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概要

本稿では、世界の最先端を行く大学の多くが米国の大学であることの要因を分析し、日本の大学改革のための示唆を抽出することを目的とする。

米国の大学システムの特徴は、競争の徹底にあり、不断に競争力を高めざるを得ないプレッシャーがかかっている。競争に勝てないと研究資金が獲得できず、また、ランキングの発達により、各大学の競争力が常に評価にさらされる。更に、より活動的となった理事会は大学の競争力の向上を常に求め、大学経営陣に圧力をかける。こうしたプレッシャーを受け、米国の大学は競争力の強化のために精力的に努力する。競争力強化の一番のカギは優秀な研究人材の確保にあるが、更に、十分かつ柔軟な資金を獲得の上、学長の明確な戦略の下、大学の資源を重点的に配分し、大学の事務局も教育と研究を支えるために協調する。

こうしたシステムの下では、優秀な研究者確保→研究資金増大→評価の向上→優秀な研究者・学生確保→資金増大といった好循環が生まれ、こうしたサイクル作りに成功した大学は比較的短い期間に、そのポジションを大幅に上昇させることも可能となる。

我が国でも2004年4月から国立大学が独立行政法人化されるが、これで大学改革が完了した訳ではなく、米国のシステムからも示唆を得つつ、日本の大学の国際的競争力向上のための更なる取り組みを期待したい。