指名競争入札におけるランダムカット方式の実験的検討

執筆者 川越敏司  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2003年8月  03-J-010
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概要

本研究では、北海道がここ3年間の入札改革で取り組んできたランダムカット式指名競争入札について、従来の指名競争入札や一般競争入札との比較も含めて実験経済学の手法に則り多角的に検討した。理論分析においては、ランダムカットを入札後・落札決定前に行う場合、ランダムカット式指名競争入札には純戦略の均衡点が存在しないことがわかった。均衡の不存在による問題は、実験においても、談合グループが予定価格と費用近くでの競争価格を交互に繰り返すという入札結果の不安定性を示す形で現れてきた。こうした不安定性をもたらす制度は、発注者にも業者にも多大な混乱をもたらすばかりでなく、効率的な資源配分をもたらさないという点で、社会的にも損失をもたらす可能性がある。

また、実験データの回帰分析を行った結果、アウトサイダーの存在が落札価格の低下や談合解消に効果があることが明らかになった。この実験結果から、北海道としては、ランダムカット式指名競争入札を早急に廃止して、アウトサイダーの導入を積極的に進めて競争性を高めつつ、一般競争入札への移行を進めることが社会的に効率的な結果を生み出すために必要であると考えられる。