ノンテクニカルサマリー

エネルギー効率投資に関する消費者評価:ベトナムエアコン市場の場合

執筆者 松本 茂 (青山学院大学)/小俣 幸子 (早稲田大学)
研究プロジェクト 貿易・直接投資と環境・エネルギーに関する研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

貿易投資プログラム (第三期:2011~2015年度)
「貿易・直接投資と環境・エネルギーに関する研究」プロジェクト

近年の経済発展に伴い途上国において電化製品が急速に普及するようになってきている。たとえば、中国の都市部において、2000年度の時点では100世帯当たりでエアコン30.8台、給湯器49.1台、パソコン9.7台しか所有されていなかったが、2010年度の時点ではエアコン112.07台、給湯器84.82台、パソコン71.17台が既に所有されるようになっている (National Bureau of Statistics of China, 2013)。途上国における家電の普及は今後更にスピードを上げながら進展していくものと予想されており、温暖化問題をなるべく進行させずに、途上国の経済発展を実現させていくためには、省エネ性能の高い製品を途上国で普及させることが重要であると言われている。

図1:「販売価格」か「年間電気代」か
省エネ エアコン浪エネ エアコン価格差
販売価格12万10万2万
年間電気代6000円8000円2000円

さて、省エネ性能の高い製品が市場に普及するかどうかは、消費者が省エネ性能をどの様に評価するかに依存する。たとえ素晴らしい省エネ性能を備えている製品があったとしても、消費者がその性能を評価してくれないならば、そうした製品が市場に普及することは無いためである。従って、省エネ製品を普及させていくためには、消費者が省エネ性能をどの様に評価しているかを知り、消費者が省エネ性能を適切に評価してくれない場合には必要な対策をとる必要がある。こうした理由から、これまで多くの研究者は消費者が省エネ性能をどの様に評価しているかについて沢山の調査を実施してきた。しかし利用できるデータの制約などから、これまでの調査の殆どは先進国で実施されてきており、途上国に関しては、どの様な家電が販売されて、消費者がどの様に省エネ性能を評価しているかについて殆ど知られていなかった。この研究で、我々はベトナムのエアコンの販売データを分析し、同国の消費者が省エネ性能をどの様に評価しているかを明らかにした。

図1に示された様な形で、エアコンの販売価格と年間電気代の関係を調べられれば、耐久消費財を購入する時に消費者がどれ位で元を取れれば良いかと考えているかを示すことができる。図1の例では、最初に2万円多く払った分を、毎年2000円ずつ10年かけて回収するということになる。もし消費者が長い期間で初期費用を回収できれば構わないと考えてくれているようなら、省エネ性能の高い製品を購入してくれる可能性は高い。

残念ながら、我々がベトナムのデータを用いて分析した限り、ベトナムの消費者が省エネ投資の初期費用を回収するために費やしても良いと考えている期間は2年~5年程度に過ぎず、通常のエアコンの使用年数よりも遥かに短い期間で省エネ投資の費用を回収しようと考えているために、今のままでは同国において省エネ性能の高い製品を普及させることが難しいということが示された。

途上国の消費者が短い回収期間を求めるのにはさまざまな理由が考えられるが、その1つの理由として省エネ性能が消費者に適切に伝えられていない可能性があげられる。近年、省エネラベルを途上国において導入する試みがなされてきているが、我々の研究の結果はそうした試みが非常に重要であることを示唆している。