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12月4日に開催されたRIETI政策シンポジウム「ブロードバンド時代の制度設計II」の議事録(ダイジェスト)を掲載いたします。 この議事録は、シンポジウムの録音テープを元にIT@RIETI編集部の責任でまとめたものです。なお、CNET Japanにも本シンポジウムの記事が掲載されているので、そちらもご参照下さい。 |
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レポート:RIETI政策シンポジウム「ブロードバンド時代の制度設計II」(2003.12.04)(その2) |
■各パネリストの意見表明:この数年の日米の状勢をどう見るか
レッシグ教授の基調講演を受けて、各パネリストの意見表明が最初に行われた。 このシンポジウムでレッシグ教授と並んでゲストに招かれたロバート・ペッパー氏はFCCで政策企画局長の要職にあり、米国の情報通信・無線分野における政策決定の中心的な役割を担っている。レッシグ教授の問題提起に対して、ペッパー局長は米国における情報通信分野におけるここ6.7年の動きを、1996年連邦通信法施行移行の状況を中心に解説した。 まずペッパー局長は、市内網の競争については明確な前進があり、新規参入事業者のシェアはおよそ23-24%ほどに達し、十分な競争状態が確保されていることを指摘した。また、1996年時点ではワイヤレスの情報通信に占める割合がここまで伸びるとは想定されておらず、現在ではアクセス網の加入者数、通信量ともに減少を始めているのだという。一方で、ブロードバンドの加入者は日本の1200万人という驚くべき伸びもあるが、米国でもケーブルテレビを中心に2200万人の加入者が居り、ケーブル会社はVoIP(Voice over IP、いわゆるIP電話)を武器に、従来の電話会社を切り崩す体制に入っていると指摘した。ちなみに、FCCは基本的に、VoIPをひとつのインターネット上のアプリケーションだとみなしており、電話と同様の規制をかける方針はないとペッパー局長は言明した。
次に、このような現状を踏まえ、前回の制度設計Iで提示された話題について、「制度設計I」に引き続いての登場となった林紘一郎慶應義塾大学教授がコメントを行った。林教授は主にレッシグ教授に対しての反論として、レント・シーキングは事後的にしか判断が出来ないこと、そして日米における情報通信分野の競争政策を取り巻く環境が異なっていることから、我が国ではむしろ企業のそのような利潤最大化行動は認められるべきではないかという反論を行った。 林教授は続けて、レッシグ教授が指摘した物理層、論理層、コンテンツ層という通信アーキテクチャのレイヤ構造に関して、物理層とコンテンツ層の二者についてコメントを行った。林教授によれば、論理層を巡る問題についてはかなりの進展が見られたが、物理層においては、有線の分野での管路(Right of way)の開放についてさらなる検討が必要であると言うこと、そして、コンテンツ層については、情報通信産業の分類として全く規制をしないプレス(報道)型産業、規制を掛けるキャリア型産業の間の両極端に別れていて、インターネットにおける放送と通信の融合を考えた際に、その中間にあるような存在に対しての法的な位置づけが不明確である点について、問題解決が必要になってくるだろうと述べた。 続いて、同様に2001年のシンポジウムでもパネリストを務めた中村伊知哉RIETIコンサルティングフェローは、「制度設計I」で指摘した4つのポイント、即ち(1)インターネットの普及をパフォーマンス面で評価した際に、日本の利用状況の方が進んでいるのではないかという点、(2)通信と放送の融合のような政策面でも日本の方が状況はよいのではないかという点、(3)インターネットの普及促進のための環境整備の問題、(4)NTTの今後の経営問題をどうするかという問題 について、(1)〜(3)についてはe-japan計画の目標値の達成や電気通信役務利用放送法による通信と放送の融合に向けての法律的な環境整備、アンバンドル規制の導入等、政府の施策によって相当程度改善が見られたと評価し、現在では残っているのはNTT問題ぐらいではないかと述べた。 そして、日米の状況の比較をした際に、コロンビア大学のエリ・ノーム教授が評していたように競争から安定へ、つまりベル系通信会社寄りの規制緩和に動きつつある最近の米国の情報通信政策に対して、アンバンドル規制を光に関しても維持するという我が国の政策はまだ競争促進という基本線を崩していないと指摘し、それは米国に置いては通信はビジネス領域だと見なされているが日本ではそれはインフラだと見なされているという違いがあるのではないかと述べ、そのような状況を踏まえた日米の政策担当者による評価、端的に言えば日本の政策は成功なのかどうなのか。そしてNTT等の問題を今後どうしていくのかという問題提起を行った。 |
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