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12月4日に開催されたRIETI政策シンポジウム「ブロードバンド時代の制度設計II」の議事録(ダイジェスト)を掲載いたします。 この議事録は、シンポジウムの録音テープを元にIT@RIETI編集部の責任でまとめたものです。なお、CNET Japanにも本シンポジウムの記事が掲載されているので、そちらもご参照下さい。 |
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レポート:RIETI政策シンポジウム「ブロードバンド時代の制度設計II」(2003.12.04)(その1) |
■ローレンス・レッシグ教授 基調講演:情報通信における政府の役割は何か
第一セッション「通信の規制改革」の基調講演はレッシグ教授が務めた。 レッシグ教授は、規制改革を設計していく際の視座(パースペクティブ)について講演を行った。中でも強調したのが、レント・シーキング(企業の利潤最大化行動)と呼ばれる囲い込みとそれがもたらす独占の危険性についてであり、レント・シーキングを防止するためにどのような制度設計をすべきなのかに焦点を当てた。 レッシグ教授は、合衆国の草創期にジェームス・マディソンが「リパブリック」で示した規制と競争に関するビジョンを紹介し、競争を重視すれば利益団体の跳梁を防ぐことが出来るという彼の示唆は結局のところ間違いであったと述べた。つまり、重要なのは(新しい技術の適用可能性でもなく)適切な政府の規制政策のあり方であり、どこに規制による弊害があるのかを特定するという、公共選択的な問題だということだ。どの技術が勝ち残るかは市場が教えてくれるのであり、規制当局者が集中すべきは、制度変革の際に既得権益者が権益を保護しようとする行動をどのように抑制するかということになるのだ。
さらにレッシグ教授は第一セッションのテーマである通信の規制改革について、レント・シーキングの問題を援用しつつ問題点を次のように指摘した。 まず、ブロードバンドの普及で日米に差がついた点については、基幹網に対するアクセスを保障する、オープンな競争プラットフォームを政府が用意したかがポイントであると指摘した。そもそもインターネットはきわめて自由でオープンなEnd-to-Endのアーキテクチャを持ち、それが多数の創造的イノベーションの基盤となってきたのに、ここ5年の米国の通信政策はそのアーキテクチャを脅かすものであったと述べた。具体的にはアーキテクチャを改変しようとするネットワーク事業者の企みや、"AOL/Microsoftization"と教授が表現するところの、物理層におけるAOL/Microsoftの結びつきの強化によって、ネットワークが自由なものから管理されたものへと性格を変化させてきたことを挙げ、これは通信分野におけるレント・シーキング行動であり、インターネットの特性を弱めるものであると非難した。 レッシグ教授は基調講演の最後に、第二セッションのテーマである無線の分野についても触れながら、もし伝統的に所有権が機能するならば、それは最適配分を実現するのだが、一方ではレント・シーキングと規制行政が結びついて既得権益の保護につながるという二つの見方が存在するとレッシグ教授は指摘した。米国のように所有権がよい物だと信じられている社会では、レント・シーキングによる既得権益の再生産が行われてしまうのであり、我々はブロードバンドのための制度転換を図る中で、その危険性をどのように排除していくのかが課題になってくると締めくくった。 |
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