現実に調査を開始すると、行政の対応にはその当事者意識によって、随分と格差があることも明らかになった。格差の第一は「Wカップ開催の意義」に関する認識も軽重であった。そして結論的に言えば、大分県の戦略的な取り組みは際立っていた。事前の戦略的な意図と、実際の施策と、事後の成果の利用など行政の継続性という観点では、見事な整合性が見られた。中津江村をめぐる一連のハプニングは、確かに望外の暁光ではあったろうが、ここまで周到な準備があればこその、神様の粋な取り計らいだったのではないか等と思ってしまうのである。もっとも、重ねて言うが、現時点ではこれらの現象は飽くまで施策レベルなので、評価としては「稼動」レベルであり、当然ながら最終的な「成果」レベルの評価には数年を要するであろう。
他方、政令指定都市にとっては概ね「Wカップ」は、数多ある事象の一つでしかないという感じを受けた。例えば調査準備を開始した11月時点でWカップに対応した部署は例外なく縮小されていたが、部署そのものが解散されて存在していなかったのは神戸市だけであった。
自治体のおかれた環境や条件によって、Wカップに期待するものの大小は異なるということであろう。つまり、ソフトが多ければ相対的に個々のソフトの価値は低くなる。イベントが多ければ、対応する行政の個々への取り組みは薄くなるという側面もあるだろう。「世紀の大イベント」を特別扱いにして欲しい、という思いが一般のサッカーファンにはあると思われるが、その思いがそのまま行政の対応に反映されるわけではない。当然その間にいくばくかの距離が存在するのである。
調査を開始して接触した自治体の中には、「あなた達はどんな権限でこのような調査を行うのか」という、あからさまな不快感を表明したところもある。そういった自治体が独自で事後評価をしているならば、その表明は「大きなお世話」という意味だろうが、残念ながら自分達の怠慢を棚上げにした発言でしかなかった。(因みに「自分達が怠っていたことを替わりに行ってもらってありがたい」という謝意の表明は皆無であった。)甚だしいところでは、「そもそもこういう事後調査はすべきではない」とと言い切った職員すらいた。彼らには公僕という意識が希薄であり、tax
payerに対する責任感という感覚がうかがえなかった。首長へのインタビューを申し入れた際、想定質問事項に「アカウンタビリティー」の語句を見つけ、「挑戦的」だと削除を要求してきたのも当然予想された範疇ではあった。この点アンケートの調査票の第1問に注意されたい。結果は興味深い。ここでは、「事後評価」そのものが問われているのだが、独自で評価していると答えたのは前述の大分県のみであった。設問時には「当面調査する予定はない」という回答が多いだろうとは予想したものの、まさか「調査する予定はない」と回答する自治体があるとは予想しておらず、いくつかが臆面もなく「ない」と回答してきたのには唖然とした。詳しくは調査報告本文で確認されたい。