■新潟文書回答

 

1) 2002年Wカップは大きな成果を上げたと思いますが、自治体の首長としての全体的な印象をお聞かせください。併せて、事前に意図されたことの達成度について自己採点すると、100点満点で何点に相当するでしょうか。自己採点をお願いいたします。また次の10の項目の中で、特に重要と思われるものを3つあげてください。(地域のアイデンティティの確立、知名度向上、経済的な成果、インフラ整備、町並み景観の向上、住民の参加意欲向上、地域ホスピタリティの向上、地域の国際化、環境問題意識、地域スポーツの振興)

 ワールドカップについて私は、「(1)新潟県を多くの世界の人に知ってもらうチャンスである」、「(2)ワールドカップという世界的なイベントを新潟県で開催することの意義を自分たちでもっと考え、ワールドカップを成功させたという自信を持って次の課題にチャレンジしていく」、「(3)世界の中で自らを客観的に評価しながら、どういうアイデンティティーのある地域づくりをするかということに結びつけていく」そういうイベントにしたいと思っていました。
 全体的な感想としましては、開催国である日韓両国が、そろって決勝トーナメント進出という快挙もあり、日韓両国民を熱狂の渦に巻き込みました。新潟スタジアムで開催された3試合についても、各国の代表チームがそれぞれの能力を最大限に発揮し、最高のプレーが見られ、白熱した好試合と各国サポーターの熱狂的な声援に、多くの県民もこれまで経験したことのない沢山の感動と興奮を体験することができたものと思っています。
 また、新潟市内では、試合会場以外でも、国際色豊かな衣装で着飾った大勢のサポーターと県民が一緒に踊ったり、歌を合唱するなど様々な交流もあり、国際交流の面でも大変有意義であったと思っています。
 一方、大会開催に当たり心配された観戦客輸送や騒動などについては何らのトラブルもなく、運営が極めてスムーズに行われ、国内外観戦客やメディア関係者にも大変好評であったと聞いております。特に、シャトルバスの運行については、海外誌が「ワールドカップ伝説の仲間入りをした」と絶賛するなど、世界に「新潟」の名声を高める役目も果たしました。
 今回のワールドカップ開催の実績が、今後の国際大会等の受け入れに大きな自信となり、さらにサッカーを始めとしたスポーツが、21世紀に生きる県民の意識や生活に新しい文化をもたらしてくれることを改めて認識したところです。

自己採点:点数化はしませんが、新潟開催は大成功でした。
特に重要と思われるもの3つ:大会の成功という観点からすると、インフラ整備、住民の参加意欲の向上、地域ホスピタリティが重要と思われます。(順不同)

2) 開催地への立候補時点、開催地決定直後、終了後、各々でWカップへのイメージ、考え方に変化はありましたか。

 開催地として正式に立候補したのが92年7月で、知事に就任したのがその年の10月ですので、知事になったときには既に立候補をしていました。
 ワールドカップへのイメージとしては、94年の米国大会、98年の仏大会と2002年のワールドカップを観戦しましたが、これまでのスポーツ大会では見たこともないような熱狂的な応援や大会のスケールに感嘆しました。
 そして、何とかこの大会を新潟で開催しよう、新潟での開催を世界に向けての新潟の情報発信の絶好の機会としたり、スポーツを通じての地域づくりや県民の意識の変化につながればと思いました。


3) 成果として挙げられるもののうち3つだけに限定し、その成果を自慢してください。

 国際スポーツ大会の経験がほとんど無かった新潟県にとって地球的規模のワールドカップ開催は全ての面において大変有意義でした。他の回答内容と重複する部分もありますが、今後のスポーツ振興やスタジアムの利活用という観点から次の3つをあげます。
(1)ワールドカップ開催による県民のスポーツに対する関心の高まりを契機に、スポーツ文化の地域への定着に加え、地域の活性化をも目指した総合的なスポーツ振興の一歩を踏み出しました。
(2)市内各所で市民が海外観戦客と肌で触れ合い交流を深めたこと、案内ボランティアとして外国人と直接話をしたり、言葉が通じなくても意志が通じ合えたことなど、今までになかった大規模の市民レベルでの国際交流が行われたことに大きな意義があり、今後の国際大会などの開催に当たり大きな財産となりました。
(3)シャトルバス運行のノウハウ:これは今後のスタジアムの利活用にも大きく関わるもので、大規模イベントの際のスタジアムへの交通アクセスを考えると、シャトルバス運行のノウハウを得たということは非常に貴重でした。


4) こうした事業に対してその成否あるいは事後評価、効果測定及びその公表などの説明責任の重要性についてどのようにお考えか、ご意見をお願いいたします。

 施策・事務事業の説明責任についての基本的な考え方ですが、県行政に対する県民の皆さんの理解を得る上で、評価の結論を公表するだけではなく、事業等の概要、企画立案の考え方、実施状況、目的の達成度等を示す指標などを評価し、その全体像を県民にわかりやすい形で積極的に公表していくということが重要なことだと考えています。
 本県では、「県民起点」を基本理念とした「新潟県21世紀の県行政創造運動」を展開中であり、この一環として、施策・事務事業等の評価結果などを県民の皆さんにわかりやすくお示しし、県行政に対する理解を深めていただきながら、成果・効率を重視した県民参加型の開かれた行政となるよう「施策・事務事業マネジメントシステム」を実施しています。


5) 直接的あるいは間接的に出された総費用はどの程度になりましたか。また、その出費は「イベントへの参加費用」としてのコストとお考えでしょうか、あるいは「将来への投資(インベスト)」としてご認識されているのでしょうか?将来への投資として考えられたとすれば、「(有形、無形いずれも)資産として何が残ったか」「今後、どのようなかたちでそれをいかすべき」とお考えでしょうか。

 招致以来の県負担額の総額は、スタジアム建設を含め約380億円です。これについては、ワールドカップ開催のための費用、将来への投資の両方と考えています。
 資産ということで一例を挙げれば、ハード面では、特に新潟スタジアムが新潟にとって必要不可欠なものとなっています。アルビレックス新潟の試合では、毎試合3万人以上の観戦客がスタジアムをオレンジ一色にして声援を送っている姿はこれまで新潟では見られなかった光景であり、新潟に新しいスポーツ文化を根づかせるためには無くてはならないものとなっており、今や新潟の財産・宝の一つになっています。
 ソフト面においては、ワールドカップを成功裏に終えることができた経験やノウハウは新潟の大きな財産となりました。ワールドカップの顔として大会成功に大きな役割を果たしたボランティアについては、平成21年予定の二巡目国体に向けて組織化を図っていきたいと考えています。また、関係機関・団体との連携についても今後の大きな財産となりました。
 これらワールドカップ開催で培った経験、ノウハウを一過性に終わらせることなく、今後の県での大規模イベントに生かしていくことはもちろん、ワールドカップ開催による県民のスポーツに対する関心の高まりを契機に、スポーツ文化の地域への定着に加え、地域の活性化をも目指した総合的なスポーツ振興を図っていきたいと考えています。


6) 単年度決算として、Wカップ関連の収支とそれについてのご感想をお願いいたします。

 開催自治体は収益事業を行っていません。


7) 住民の自治参加意識の醸成にWカップ開催は貢献しましたか。

 大会は、ボランティアの皆さんの献身的な協力、県民の方々や企業・団体の様々な協力や自主的活動のお陰で成功しました。また、国内外の観戦客に新潟を知ってもらったり楽しんでもらうために設置した「ワールドカップパーク」に多数の市民団体が参加し郷土芸能等を披露するなどもてなしの心を十分発揮してくれました。
 ワールドカップが住民の自治参加意識の醸成に貢献したかということでは、今後このような自主的な活動などがいろいろな場面ででてくることを期待しています。


8) 市民レベルでの国際交流という点ではいかがでしたか。

 新潟市が昨年7月に実施したアンケート調査によると、ワールドカップがどのような効果を市にもたらしたかという問いに、「国際交流の促進が図られた」という回答が4番目に多く寄せられたということです。
 私自身は、新潟でのホスト役ということでスタジアムにいることが多かったのですが、「まるで異国にいるような感じだ」、「こんな新潟を初めて見た」と多くの方から聞きました。多くの県民が身近に海外観戦客と接することができたことは非常に有意義だったと思います。
 なお、新潟市では、ワールドカップを契機に韓国の開催都市の一つであるウルサン市と少年サッカー交流を定期的に行うことが合意されたと聞いています。


9) 交通・インフラ、宿泊施設、商業施設、文化財施設などで貴地域において不足しているもの、より充実させたいと思ったものはありますか。

 非継続的なワールドカップということで考えると特にありません。


10) 自治体、民間を問わず、人材は十分でしたか。将来さらに人材育成の充実を図るためにはどのような政策が有効でしょうか?ご意見を伺わせてください。

 人材は十分だった思います。ワールドカップを通じて感じたことは、一人ひとりが経験し大なり小なり大会運営を始めとした様々なノウハウを得たことに意義があったと思います。


11) 「アルビレックス新潟」の存在がワールドカップ開催にどのようにいかされましたか?また今後さらに発展させるための具体的な方針などがあれば、お聞かせください。

 アルビレックス新潟は、ワールドカップ新潟招致に向けて、また、県民のスポーツやサッカー振興の気運醸成の面から、県内多方面の尽力を得て結成されました。ワールドカップとアルビレックス新潟との関係で言えば大きくは次の3つになると思います。
(1)サッカー後進県で招致決定でも盛り上がりに欠けた感じのした新潟で、アルビレックスの活躍とともに、ワールドカップへ向けた気運の盛り上がりとサッカーへの理解が深まりました。
(2)アルビレックス新潟で活動していたボランティアが、その経験を生かし大会時のボランティアの中心となって活躍してくれました。
(3)アルビレックス新潟の試合を活用してボランティアの実施研修ができたことは、サッカーを初めて経験するボランティアの皆さんには絶好の研修の場となりました。

 アルビレックス新潟は、地域に根ざすJリーグ理念で活動しています。3万人〜4万人が思いを一つにして応援できる対象がアルビレックス新潟であり、新潟スタジアムがそれを実現してくれます。ワールドカップ後の新たな気運は、県民に夢を与え、豊かなスポーツ文化を築く土壌ができつつあると言えます。
 今後は、アルビレックス新潟の協力を得て、小中学生を対象とした「ゆめづくりサッカー教室」の開催によりサッカーの底辺拡大を図ることはもちろん、スポーツ全般の底辺の拡大を考えています。


12) 大会終了後、新潟で試合を行った国を中心とした国際的なPRを継続して行っていくお考えはありますか?

 新潟で試合を行った国というよりは、北東アジアを中心に、アジア、さらには欧米へと「人、もの、情報」の交流拡大に取り組んでいくこととしています。
 また、新潟にいろいろな世界大会を誘致することにより世界に向けての情報発信もしていきたいと考えています。
 なお、クロアチアチームのキャンプチとなった十日町市では、クロアチアのある都市と友好関係を結び、今年から「クロアチア杯」のサッカー大会を創設することになっています。