■茨城知事インタビュー

 

1) 開催地への立候補時点、開催地決定直後、終了後、各々でWカップへのイメージ、考え方に県として変化はありましたか。全体的な印象をお聞かせください。

 鹿島アントラーズが平成5年に、Jリーグのファーストステージで優勝し地元が活気づいた。鹿島地域は元々住んでいた人と、他の地域から移り住んできた人との一体感がなかなか生まれず、また,若者が喜んで住む街というイメージもなかった中で、サッカーが大変な盛り上がりを見せた。こうした当時の雰囲気に後押しされ、ワールドカップを茨城に招致することで、鹿島にとどまらず県全体の活性につながるのではないかと考え立候補したもの。
 ワールドカップ開催決定後も、アントラーズの活躍により更にファン層も拡大した。また,若者のエネルギーをサッカーの応援に向けることができ、暴走行為が減少するなどいい方向転換ができた。企業の中には、鹿島に転勤したいという若い従業員が生まれるなど鹿島の地域イメージもアップした。
鹿島はワールドカップ開催20会場の中でも最も小さな地域であるが、田舎なりの良さを出そうと意識した。電車を降りてからスタジアムまで30分くらいの道沿いに誘導サインの装飾に工夫をこらしたり,小学生が描いたワールドカップの絵の展示などを行い試合へのムードを演出した。また,スタジアム周辺にわいわい交流広場を設け、フェイスペインティングサービスや屋台を出したり、急遽花火を打ち上げたりするなど大変盛り上がった。お祭りムードという点では、本県が一番ではないか。若者のために用意したキャンプもマスコミなどに頻繁に取り上げられ,大成功だった。
 試合数3は少なすぎたというのが本音。もう少し試合が多ければもっと盛り上がった。
アントラーズ活躍の10年で、サッカーを見る側(サポーター、運営ボランティアなど)の文化が地域に根付いてきた。ワールドカップ開催により地域の一体感が深まった。

2)成果として挙げられるものを3つほど。

● 地域の一体化
  上述のとおり地域が一体となり盛り上がったこと。

● サッカー人気の向上
  茨城に限った話ではなく、Jリーグ発足後、サッカーブームは一時下火になったが、ワールドカップの開催決定により盛り返した。更に、ワールドカップ後もサッカー人気は続き、20〜30年後はファン層が相当広がると思う。
この意味でワールドカップが、日本にサッカーを定着させたといえる。

● 社会資本の整備
  Wカップをきっかけに交通インフラの整備等が進み、日曜日なら東京の八重洲から鹿島まで1時間20分程で着ける。東京方面(東関東自動車道 潮来インター)からのアクセスが格段に良くなった。
スタジアムもFIFAマタラ−ゼ副会長から「劇場のようだ」とほめられた。芝がきれいということが誇り。日本各地のスタジアムから芝の育成について問い合わせがある。

3)自己評価すると100点満点の何点?
また、ワールドカップのPR効果についてはどのようにお考えですか。

 
95点。減点は、茨城の開催期間(6/2〜8)が短すぎたということ。このため盛り上がりは鹿島地域に限定され、県内全域まで盛り上がるには時間が足りなかった。
県域テレビがなかったというのも要因と思う。テレビというメディアパワーは大きいので、その点もったいなかった。なお、来年10月以降に、NHKが地上波デジタルの県域テレビ放送を開始する。
日本全体としてもやはり決勝ラウンドあたりから盛り上がってきたので、茨城で準決勝/決勝などが行われればまた違った成果が得られたかと思う。その点は惜しまれる。
しかし、祭りムードを演出でき皆から喜ばれ、鹿島を広く国内外にアピールでき、大きな効果があった。

4)スタジアムの整備、アントラーズの設立は茨城にとって投資という意識が強かったように思うが、どのようなリターンを生むと考えているか?
  
鹿島地域は,周辺地域に比べ元気がある。利根川対岸は人口が減っているが,鹿島地域は発展を続けている。
サッカーへの取組みがなかったら,この地域のイメージも違うものになっていたし,元気が無く,若者も少なくなっていたかもしれない。
 投資に見合う金銭的効果がないと評価するのは当たっていない。
波崎町にはサッカー合宿が定着し,10〜20億円規模の産業になっている。
 景気が悪く,工場の整理統合が進んでいるが,そういう場合も名前が有名になった分,有利に働く面もある。若者のボランティア活動が活発化したなど教育面などでもいい影響を与えている。全体として良かったのではないか。

5)最後に茨城として重点的に取り組んでいる施策をお聞かせください。

県内には、鹿島の外に、つくば、東海、日立など高度な科学技術の集積地を数多く有しているので、これらを産業振興や県民の生活向上に結び付け、日本をリードする最先端の科学技術立県を目指している。
県では,現在3本の高速道路,つくばエクスプレス常陸那珂港の整備,ひたちなか地区開発、百里飛行場の民間共用化など広域交通ネットワークの整備を進めている。
また、企業等が立地しやすく,若者も喜んで住めるよう,昨年9月から伝送容量2.4Gbpsの高度情報通信基盤、いばらきブロードバンドネットワークを整備している。
これらを活用し,「つくば・東海・日立の知的特区」「鹿島経済特区」「ひたちなかを中心とした物流特区」などの構想を推進するとともに,産業の活性化と雇用機会の確保を図るため,新規立地企業等に法人事業税及び不動産取得税を免除する全国一思い切った特例措置を講じることとしている。
このように、科学技術立県の基盤づくりを進め、本県産業の振興を図り、雇用の場がしっかり確保された元気な茨城をつくる。この活力を生かし、福祉や医療、教育や文化、環境などの面を一層充実させ、すみよい県づくりを実現していく。