■札幌文書回答

 

1)2002FIFAワールドカップは大きな成果を挙げたと思いますが、首長としての全体的な印象をお聞かせ下さい。

 ワールドカップは世界が注目する大会であり実際に開催してみて、サッカーが世界共通のスポーツであるとの印象を強く感じました。
 また、大会期間中の日韓両国の盛り上がりは、スポーツが国民に与える影響の大きさを実感したところです。
 札幌においても、期間中は国内外から多くの観客が訪れましたし、各国の様々なメディアの方々の取材など、ワールドカップを通じて、世界に札幌と札幌ドームをアピールできたと考えています。
 世界の厳しい予選を勝ち抜いた32カ国の試合は、どの試合も白熱した好ゲームであり、札幌の3試合は、ドイツ、イタリア、アルゼンチン、イングランドと強豪がそろい、特に、アルゼンチン対イングランド戦は、今大会を象徴する名試合であったと思っています。このようなレベルの高い大会を札幌で開催できたことは、市民にとって素晴らしい体験であり、大きな財産になったと考えています。

2)開催地への立候補時点、開催地決定後、終了後、各々でワールドカップのイメージ、考え方に変化はありましたか。

札幌市は、冬季オリンピック札幌大会、ユニバーシアード冬季大会や様々な国際コンベンションを開催しており、これまでの経験から、オリンピックに匹敵するイベントであるワールドカップへの理解はもっていましたが、フランス大会の視察を期に、改めて、この大会がサッカーの頂点を争うと同時に、世界のファンが集まって楽しむという、素晴らしい祭典であるとの認識を深めました。
 また、この大会にはフーリガン問題が必ずついて回りますから、安全の確保が課題になることは承知していましたが、2001年夏の明石市の歩道橋事故や米国の同時多発テロで大変緊張することになり、また、ファイナルドローでドイツ、イタリア、アルゼンチン、イングランドという強豪国の対戦が決まり、まず、安全確保がなにより重大であるとの認識を強くしました。
 しかし、この大会がサッカーを通じたお祭りであるとの認識は、終始変わらず、安全を確保するとともに、世界のファンを暖かく迎えて、札幌のワールドカップを心から楽しんでいただくことが大切であると考えました。
 安全と祭りの盛り上げの両立は、難しい課題でしたが、警察にもご理解いただき、全体としてうまくいったと思っています。
 また、日韓の共同開催、国内10開催地との協力、マーケティング構造、エンブレム、ロゴなど知的所有権など、学ぶことは多く期待以上の収穫があったと思っています。

3)住民の自治参加意識の醸成にワールドカップ開催は貢献しましたか。

 札幌では、対戦の組み合わせが決まって以来、マスコミの報道で、フーリガンに対する不安感の高まりもありましたが、多くの関係者や住民の方々のご協力により、何事もなく大会を終了することができました。
 フーリガンやテロへの対策には、多くの市民の方々のご理解と最悪の事態を想定した万全な備えが必要でしたが、大会を成功裡に終えることができたことは、本市としても大きな自信になりました。
 また、本市には冬季オリンピック以降、ボランティア組織が育っておりますが、今大会においても、その活動は高く評価できるものであり、今回の大会を通じて成熟度が高まったものと考えています。

4)市民レベルでの国際交流という点では如何でしたか。

 大会期間中、大通公園に設置したファンヴィレッジには51万人の方々が訪れ、海外からのサポーターと多くの市民が触れ合う姿が見られました。
 また、札幌でも1300人のJAWOCボランティアと、380人の自治体ボランティアに大会運営や案内業務等に携わっていただきましたが、どの業務においても、心のこもった対応により、英国関係者はじめ多くのサポーターの方々から感謝の言葉をいただくなど、札幌のイメージアップが図られたとともに、市民の国際交流の推進に大きな成果があったと考えています。

5)ワールドカップ開催について最大の狙いと成果を優先順位の高かったものから3つお答えください。

 一つ目は、シティPRです。
 札幌市では、『ワールドカップは、札幌で開催される多くのコンベンションの一つであり、世界が最も注目する大会を通じて、初夏の札幌と札幌ドームの素晴らしさを世界に知ってもらうこと、そして、オリンピック以来培ってきた、都市としてのホスピタリティに新たな経験を付け加え、更に充実すること。』を目的として、この事業に取り組んできました。
 グループリーグの3試合ではありましたが、全てが第一シードで試合の組み合わせにも恵まれ、フーリガン報道にゆれはしましたが、アルゼンチン対イングランド戦は、国内外から注目が集まり、シティPRの絶好の機会となりました。
 特に会場となった「札幌ドーム」は、8300トンのサッカーステージを空気圧により10分の1の重さとし、スタジアムの中に移動する芝転換システムを備えることで、天然芝のサッカーと人工芝による野球、またコンサートや様々なイベントを開催できる世界で初めてのスタジアムであり各国のメディアをはじめ、関係各方面の注目を浴び、大会終了後も様々な取材や問い合わせが後を絶たない状況となっています。

 二つ目は、国際化の推進です。
 大会期間中は、多くのボランティアや市民の方々の熱心な応援や親切な対応で、ホストシティとして心のこもったおもてなしができたと考えています。
 特に、案内業務など市内及び会場周辺で働いていただいた、自治体ボランティアについては、本市の様々な交流事業やコンベンション、スポーツ大会、観光案内などで、これまでも積極的に活躍いただいている、札幌国際プラザ、体育指導委員会、地域スポーツリーダー、社会福祉協議会、観光ボランティアといった既存の団体の参加、協力をいただきましたが、これらの方々にとっても、貴重な経験になったと思います。
 また、多くの市民の方々が、国際交流を肌で感じ、新たなスポーツの楽しみ方を経験したと思います。
 札幌市は13年度に「国際化推進基本指針」を策定し、国際化施策の更なる推進と新たな展開を図ることとしていますが、このワールドカップの成功は、札幌市の財産と市民の大きな自信となり、今後の国際化への大きなステップになるものと考えています。

 三つ目は、経済波及効果です。
 民間のシンクタンクでは、札幌市で行われるワールドカップ・グループリーグ3試合の開催に伴う経済波及効果を、約73億円と試算しています。
 これは、約1ヶ月間に及ぶ開催期間中、札幌に訪れる観客を、国土交通省の試算に基づき、海外約4万人、国内約11万人の合計15万人、延べ宿泊者数21万人とし、土産品の購入や飲食、宿泊、交通費等の消費を行ったものとして計算したものです。
 しかし、海外からの観客は長期間にわたって各会場を回ることを予定しているため、財布の紐は硬かったと見られます。
 従って、経済波及効果の予測値は冷静に考えるべきと思います。
 しかし、札幌市民のグッズ購入や関連イベントによる消費拡大、報道及び警備などの消費、さらには、札幌ドームの建設とそこで行われる数多くのイベントやワールドカップを通じて知名度が上がったことの効果など、長く広い視点から考えると、大きな効果があったと考えています。