同時に、自分の中に作り上げたイメージに相手をあてはめないことが大事です。たとえば、日本人はよく中国のことを「中華思想」といい、尊大、傲慢なイメージを持っています。70、80年代の中国は世間知らずの田舎者だったせいでそういう「中華思想」の面があったかもしれないですが、今の中国はWTO加盟に示されるように「世界と関わっていこう」という開かれた気持ちが強い。もちろん大国なので、自己中心的なところはありますが、それは中国だけの問題ではない。中国で何か起こると、その原因を追及せず、やはり「中華思想」だと決め付けるのはよくない。他方、同様に中国人は日本のことをよく「軍国主義」という。右翼が何かをすると、「やはり日本は軍国主義だ」と思い込む。こういったイメージで相手を決めつけることをお互いにやめるべきでしょう。
「軍国主義」批判を聞いて、日本の国内には中国はいまの日本を全然理解していないという不満がある。しかし、そこには日本側の原因も寄与しています。普通の中国人は、流通を許された映画やテレビ、書籍からしか日本を知る機会はなく、生の日本を知りません。日本語を学習している中国人でさえそうです。現在の日本を中国人が知らないことによって生まれる誤解は数多い。
なぜ中国人がありのままの日本を見るチャンスが少ないか。それは日本のビザ審査(渡航制限)が厳しいからです。そして、それは中国人の不法滞在や犯罪が深刻な問題になっているからで、理由のないことではない。しかし、日本に呼ぶことが明らかに日本の利益に適う、優れた中国人も大勢います。そういう人たちが厳しい渡航制限が原因で日本に行く気を失い、興味も持たない。まずはその点から改善すべきです。今はまだ実験段階ですが、これからの中国経済を背負って立つ新進気鋭の企業家にに対するマルチビザ発行が徐々に増えています。昨年始めた日中経済討論会でも、こういう中国ビジネスマン人にマルチビザが発行されました。今年も実験を続ける予定です。
最後に、これからの日中関係は、「競争」だけでなく、「競争と協調」の関係に基づいた“Win&Win”型の発展を志向すべきです。それはアジアの二大大国としての日中両国の責任でもあります。現在「アジア経済統合」はホットイシューになっており、すでに経済の一部では「事実上の統合」も進んでいます。ただし、日本の農業であれ、中国の自動車産業であれ、FTAのような制度的統合に向かえば、双方とも相当な苦痛を伴う改革を進めなければなりません。双方の政治的な信頼関係はまだまだ足りず、その面からもFTAの構築は容易なことではありません。ただし、その改革を達成できれば21世紀の日本には新しい展望が開けてきます。また、日中がこれを最後までやりとおす意志を持つか否かがアジア全体の経済統合が実現するかどうかの鍵になることもはっきりしています。 |