第四次産業革命の中で変容する国際貿易・海外直接投資

執筆者 冨浦 英一 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2019年10月  19-P-018
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概要

世界経済は、情報通信技術の普及もあって貿易・投資を通じて統合を深めてきた。こうしたグローバリゼーションの深化を受けて、RIETIでは、国際貿易・海外直接投資に関する広範なテーマについて研究が進められた。まず、国境を越えて財・サービスだけでなくデータが移転されるデジタル貿易にビッグデータとAIの時代で関心が高まったことから、企業の越境データ移転について分析に着手した。また、オフショアにも展開する企業間取引ネットワークについて、企業ミクロ・データや企業異質性貿易理論により分析した。GATT以来の貿易自由化が続いた後では、残された障壁として輸送、通信、マッチングの負担等に関心がシフトしたことから、広義の貿易費用の影響について経済分析を行った。政策の評価に関しては、多数締結され絡み合うようになった自由貿易協定の効果について計測が進められた。法制度面では、市場経済システムと異質な国有企業などにWTOの国際通商ルールが如何に対処すべきかがこの時期の大きな論点となった。いずれも伝統的な財の貿易の理論分析だけでは把握しきれないグローバリゼーションの新しい局面に着目した研究である。ただ、最近では、米国の通商政策の転換、英国のEU離脱、多くの国々における保護主義や移民反対への支持の高まりなど、グローバリゼーションの流れに反転が見られる。これらの新たに生じたイシューについて、今世紀に入り新展開を遂げた国際経済学の分析ツールを用いて、精緻な分析を加えることが的確な政策判断のためにも求められている。