執筆者 | 西村 和雄 (ファカルティフェロー)/宮本 大 (同志社大学)/八木 匡 (同志社大学) |
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発行日/NO. | 2017年3月 17-J-015 |
研究プロジェクト | 日本経済の持続的成長のための基礎的研究 |
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概要
近年の日本では研究開発力が低下しつつあることが文部科学省の科学技術白書でも指摘された。実際、特許出願数が多い国の推移をみると、日本だけが特許出願件数の絶対数が減少しつつあり、その結果、アメリカ、中国に後れを取り、韓国との差も無くなっている。さらに、1人当たり国民所得や工学系論文発表数も、相対的かつ絶対的に低下し、世界のトップレベルから引き離されている。日本の研究開発力の低下は一過性のものではない。
研究開発者を養成するものは教育に他ならない。日本では、長い間、高校生の物理II相当の履修率が1割台にとどまるという顕著な理系離れとともに国内の研究開発者の供給も減少傾向にある。こうした理系離れは、学習指導要領の変更にともなう理数系科目の軽減が一因となっているとの指摘もある。
我々は、学習指導要領が変更された年で年代を分け、高校時代における理数系科目の学習状況の変化と、技術者になってからの特許出願数と特許更新数の関係を分析した。
その結果、中学時代の3年間ゆとり教育を受けた47歳以下の世代と、それより上の世代では、特許出願数と特許更新数に大きな違いがあり、特に、中学時代の数学と理科の時間数が、技術者の高校時代における数学や物理を得意とする度合いと相関していることが分かった。このことは、学習指導要領の改訂とともに、なぜ、技術者の特許出願数と特許更新数が減少してきたかを明らかにするものである。