地方自治体職員から見た地方創生の現状と課題-産業振興行政担当者に対する意識調査の概要-

執筆者 小川 光 (東京大学)/津布久 将史 (名古屋大学)/家森 信善 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2016年12月  16-J-064
研究プロジェクト 地方創生に向けて地域金融に期待される役割-地域経済での雇用の質向上に貢献するための金融を目指して-
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概要

我々は、これまで地域中小企業や地域金融機関の観点で地方自治体の地域振興について調査してきたが、地方創生の「主役」であるはずの地方自治体の側から見た金融機関連携における課題などを調査しておかねば、地域金融機関側からだけの分析では地域創生の取り組みの全体像をとらえることは難しい。そこで、我々は、2016年2月に、地方公共団体の産業・商工振興担当者に対する意識調査を実施し、500名の回答を得ることができた。本稿は、その調査結果を報告することを目的としている。

本調査によると、たとえば、地域活性化を図るパートナーとして、とりわけ重要度が高いと考えられているのが、「商工会議所・商工会」と「指定金融機関」、および「それ以外の民間金融機関」となっており、地域金融機関に対する期待が大きいことがわかる。また、金融機関と自治体が協働するうえでの障害として、圧倒的な割合を占めているのが「自治体の職員の側に、金融に関する知識が乏しい」との回答であり、自治体職員の金融知識不足が障害の主たる要因になっていると認識されていることがうかがえる。また、町村では「協働したことがない」という回答が、他の自治体に比べて目立って大きな値を示しており、自治体の規模によって、金融機関と自治体の協働を行う際の障害に差がある可能性も指摘できる。金融機関との協働による地方創生を実現していくためには、国や都道府県などが基礎自治体の事情に合わせた支援を行うことが不可欠である。