中小企業のグローバル展開-日独比較-

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員)
発行日/NO. 2016年6月  16-P-010
研究プロジェクト IoTによる生産性革命
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概要

本稿は、RIETI/Policy Discussion Paper 「『独り勝ち』のドイツから日本の『地方・中小企業』への示唆」(2015年3月、岩本晃一著)に盛り込まれなかった調査内容および同PDP発行以降の調査結果を、「中小企業のグローバル展開」の観点からとりまとめたものである。
かつてドイツは「欧州の病人」と呼ばれていたが、わずか十数年で「独り勝ち」と呼ばれるまでに急成長した。その際、ドイツの中小企業、なかでも「隠れたチャンピオン」と呼ばれる強い中小企業が大きな役割を果たした。「隠れたチャンピオン」の成長要因を解き明かすことで、日本の中小企業をGNTへと成長させる秘訣を得ることができる。
ところで、企業活動は、「世界で売れる製品を開発」し、「世界市場で売る」という基本的な行為の繰り返しである。これまでの調査により、「隠れたチャンピオン」の活動のうち「世界で売れる製品を開発する」という部分に関しては、ほぼ解明が終了し、上記RIETI/Policy Discussion Paper にとりまとめた。その調査結果は、日本政府の政策にも一部反映された。
だが、後半の「世界市場で売る」という部分に関しては、これまで解明すべく努力してきたが、まだ荒いサンプリング調査に基づく推測の域を出ず、「隠れたチャンピオン」全体の傾向を現すデータやエビデンスが得られておらず、網羅的な解明がなされていない。「世界市場で売る」という部分は、日本の中小企業の最も不得意とするところであり、ドイツに大きく後塵を拝している。今後ともドイツの「隠れたチャンピオン」のグローバル展開について、その全体像の解明に取り組みたい。