証券化による発行者の資産リスクの変動と資本市場の評価―J-REITのケース・スタディ―

執筆者 江上 雅彦 (京都大学)/細野 薫 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-018
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

証券化の前後によって、発行者の資産価値はどのように変動するのか、つまり当該発行者の資産リスクはどう変化するのか、また資本市場において投資家は資産売却という変化に対してどのように対応するのか? こうした問いに答えるために、本稿では、J-REIT設立のアナウンスメント前後のスポンサーの資産価値を厳密に推計し、そのボラティリティや市場インデックスとの連動性を分析した。分析の結果、J-REIT設立のアナウンスの前後で、資産価値のボラティリティの変化に一定の傾向は見出されないものの、アナウンス後に不動産業の株式市場インデックスとの連動性は弱まる傾向があることを見出した。また、不動産業以外の企業がスポンサーの場合には、本業の属する株式市場インデックスとの連動性が高まるケースが見られた。