ノンテクニカルサマリー

東京電力福島第一原子力発電所事故による農林水産品の風評被害と損害賠償に関する経済学的評価分析

執筆者 戒能 一成 (研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

本論文は2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故に起因して発生した農林水産品の風評被害について、東京都中央卸売市場などでの取引価格・数量を用い計量経済学における平均措置効果の手法を応用した定量的・網羅的な評価分析を行いその収束・継続を判定する手法を開発するとともに、具体的な評価分析を行うことによりその収束・継続の状況を明らかにし、さらに評価分析の過程で観察された問題点について検討を加え必要な政策提言を行うものである。

本論文では福島県など5県の産地別に出荷制限が継続している水産品・米など10品目および出荷制限が既に解除済または対象外であった食肉類・花卉など14品目の農林水産品を対象として、取引高構成比の相対指数時系列回帰分析および相対価格のベクトル自己回帰分析などを行い本件事故発生前後での取引高や相対価格の有意な下落の有無を統計的に検定することによって評価分析を行った結果、福島県などにおける上記24品目での風評被害の影響が大部分収束している状況を明らかにしている。

さらに当該産地別・品目別での評価分析において観察された米や牛肉での風評被害の地域偏差や品目別偏差などの問題について検証と考察を加え、風評被害などによる影響の早期収束に向けた政策提言を行っている。