第4次産業革命とは何か

岩本 晃一
上席研究員

「第4次産業革命」という言葉は、2013年4月にドイツ人が「インダストリー4.0構想」を発表した際、過去の現象とは大きく飛躍する内容であることを強調するために、彼らが使い始めた言葉である。ドイツ人がいう「インダストリー」とは日本人がいう「製造業」にほぼ等しい。「ものづくり」を国家経済の基盤とする彼らにとって、産業とは製造業のことを指すのである。

「テクノロジーの進歩」の主流部分は極めてシンプルである。それは「早く、大量に、安く、小さく」である。これまで、その進歩が、ある水準を超えたとたん、人類の生活を劇的に変えてきた。

例えば、オフィス・コンピュータが会社の1部署に1台設置されるだけの時期が過ぎ、パーソナル・コンピュータが社員1人に1台支給されるようになったとたん、コンピュータは爆発的に広がった。また、あるSNSに文章を書いてネットに掲載されるまで0.0001秒を切ったのなら、そのSNSは世界中に爆発的に広まるのである。

このスピードで技術が進化すれば、やがて、スパコン京が手のひらサイズになる。そうすると、例えば、IBMのワトソンや日立のルマーダといった今は大企業しか使えない人工知能(AI)を、個人が簡単に使えるようになる。

インターネット元年の1995年以降、パソコン、スマートフォン、タブレットなどが出現し、新しいビジネスが生まれ、新しい企業が生まれ、仕事の仕方やライフスタイルが劇的に変化するという歴史を我々は体験してきた。だが、それは、社会が大きく変容する第4次産業革命時代のほんの入り口でしかない。

情報・通信技術は、ムーアの法則に基づいて、「早く、大量に、安く、小さく」が幾何級数的に進歩していたにも関わらず、ビジネスモデルは、従来どおりの変化のない同じパターンを毎年繰り返していた。ところが、実は、今の情報・通信技術を使っただけでも、かなりのことができることに世界中の人々が気付き始めたのである。これが、ドイツ人が言い始めた「インダストリー4.0」である。

第4次産業革命では、今後、あらゆる産業分野が、「デジタル化」「コンピュータ化」「ネットワーク化」「オートメーション化」され、AIを持つことで、これまでできなかったことができるようになり、これまで存在しなかった機器・サービスが出現し、更に多くの新しいビジネス・企業・雇用が創出され、将来、あらゆる産業分野に大きな変革が起きると予想されている。

IBM研究所は、同社の製品を納入している企業の経営トップに対して毎年アンケート調査を実施しているが、2015年11月調査での、CEOからの回答を見ると、今後、企業競争力に最も大きく影響を与える要因のうち「テクノロジー」の順位は、2004年6位、06年3位、08年3位、10年2位、12年1位、15年1位と推移し、以来ずっと1位である。すなわち、その他の要因として選択されている「市場の変化」「マクロ経済状況」「人材スキル」「法規制」「グローバル化」などよりも「テクノロジー」の内容が市場における企業競争力の勝敗を決すると見ているのである。また、今後の最大の脅威は、異業種からの競争者の新規参入であると答えている。例えば、ウーバーがタクシー業界に参入し、グーグルが自動車業界に参入したように、異業種からの参入者は業界の既存の常識にとらわれないため、一体、何を仕掛けてくるかわからない、という恐怖感があると答えている。

PWCの第20回世界CEOの意識調査日本分析版によれば、「今後5年間に貴社の業界と貴社のビジネスモデルに対して最も破壊的な影響力があるのは、どの技術ですか(それぞれ一つ選択してください)」との質問に対して、IoTとAIが圧倒的に他を引き離して上位を占めた。

以上の調査からわかるように、日本を含めた世界のCEOが、これからはIoTとAI技術が企業の勝敗を決めると見ているのである。

第4次産業革命とは何か、をまとめると以下のようになるだろう。

○巨大市場の先行利得を目指して世界中の企業が熾烈なグローバル競争を展開しようとしている。そこでは、他業種からの参入や新しいビジネスモデルの出現など過去に例のない大きな変化が生まれている。過去20年と比較して、今後の20年はその数倍の大規模な変革に及ぶ。しかも、その変革が全ての産業分野に及ぶ。

○日本の電気産業は、過去20年のグローバル競争に負け、大きく衰退した。だが、日本企業の経営者の多くは、世界の激しく早い動きに無関心である。

○もし今の日本の製造業を支える自動車産業が大きな変革のなかでグローバル競争に負ければ、日本経済は破壊的ダメージを被る。その自動車産業は、今後10〜20年、電気自動車(EV)化、AIの搭載、3次元プリンターの出現、所有からシェアリングへ、など、大きな構造変化に直面する。自動車及び関連部品企業のどのくらいが変化に対応し、勝ち残っていけるのだろうか。

○今後、電機以外の産業でも日本が負け続ければ、電機同様、リストラや地方工場の閉鎖が相次ぐだろう。第4次産業革命は、全ての国の全ての企業にとって大きく飛躍できる絶好の機会であるが、その反面、競争に負ければ一気に沈没する可能性もある。だからこそ、人は、改革(Reform)でなく、革命(Revolution)と呼ぶのである。

2018年8月25日 生産性新聞「第4次産業革命を生き抜くための生産性向上」に掲載

2018年9月12日掲載

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