力強い成長を達成できるかは不透明:早急な政策対応が求められる

開催日 2016年2月29日
スピーカー キャサリン・L・マン (経済協力開発機構(OECD)チーフエコノミスト)
モデレータ 田代 毅 (RIETIコンサルティングフェロー/経済産業省経済産業政策局調査課課長補佐)
開催時刻 12:30~13:30(受付開始及び開場:12:00)
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開催言語 英語

議事録

はじめに

キャサリン・L・マン写真経済協力開発機構(OECD)の中間経済見通し(2016年2月)は、世界経済の成長見通しが不透明であることを示しています。本日は、その根拠と、早急な政策対応が求められる理由についてお話します。つまり、成長の強化はすぐに達成できそうにないこと、また、低成長均衡状態から脱却するには、政策担当者が利用できる3つの政策手段(財政政策、金融政策、構造改革)を相乗的に活用する政策協調が必要である理由をお話しします。

脆弱な貿易と投資、物価安は、いずれも世界経済の成長を圧迫しますが、構造的な理由から、このような状態はしばらく続くと思います。今回発表の見通しでは、新しいデータが成長の強化を裏付けるものではなく、期待外れであり、賃金上昇も見られなかったことから、2015年11月の報告を下方修正しています。実体経済上の懸念に加え、金融不安に伴う大きなリスクも不安材料となっています。最近の世界的な株式市場の急落、資本フローの変動、特に新興市場における累積債務リスクなどにも表れています。金融政策はおおむね適切ですが、これだけでは経済の活性化に不十分です。これが、政策協調が急務だと考える理由なのです。

投資主導型の支出といえば、大半の人がハードインフラを思い浮かべます。このような投資が必要な国もありますが、すでに多数の道路や橋が整備されており、ソフトインフラ(社会的セーフティネットの拡充など)を財政支出の対象とする方が望ましい国もあります。

最後に、財政・金融政策によって世界経済の持続可能な成長を加速させるためには、生産性と成長を後押しする構造改革を押し進めることが必要です。

エビデンス

世界経済は金融危機後にいったん上向きましたが、その後3年間は停滞状態が続いています。OECDの予測では2017年も低成長が継続するでしょう。中国経済は減速しており、2017年までに成長率は6.2%まで下がると予想されます。日本のデータからは若干の回復が予測されますが、特に力強い回復は見込めません。そして、現在の金融政策に伴って必要な構造改革が適切に行われるのかという不安もあり、政策上の懸念は今後も続くでしょう。

米国についてですが、第4四半期のGDPデータが、OECDの経済見通し発表後に公表されています。2015年のGDP成長率が若干上方修正されたとはいえ、2016年の成長率2%、2017年の2.2%というOECDの予測は妥当だと思います。というのも、修正の大部分が在庫の積み増しによるものだからです。

次にユーロ圏については、成長が加速しているかのように見えますが、注意すべき点があります。2015年の成長率は1.5%と非常に低かったことです。2017年には若干上昇して1.7%になると予想していますが、この見通しは多くのリスクが伴っています。まず、重要な負のテールリスク、つまり定量化はできないが、ユーロ圏に多大な影響を及ぼしうる出来事が存在するからです。たとえば、英国の国民投票では(EU離脱か残留か)どちらが勝利を収めるのか分かりませんし、ギリシャとEUが最終合意できるのかも分かりません。一方で、欧州が求心力を維持できれば、2017年までにユーロ圏経済は若干成長するのではないかと考えられます。

OECDでは年に2回、通常5月と11月に包括的な見通しを発表し、さらに年に2回、より簡易的で概略的な分析に基づいた中間見通しを発表します。2016年については、なかでもドイツ、米国、カナダについて見通しの下方修正を行いました。世界経済の見通しについても、0.3ポイント下方修正しました。2017年については、主要国すべてについて全般的に下方修正しましたが、状況には若干の違いがあります。

成長見通しを下方修正したのは今回が初めてではありません。近年では、世界経済が加速し始めたと考えるたびに、次回の見通しで見直しの下方修正せざるを得ない状況が続いています。上向き傾向を支える要素だと思われていることの大半が、うまく機能していないように見えるからです。たとえば、現在では失業率が非常に低くなった米国のように、労働需給が逼迫している国においても、いまだに賃金の上昇が見られません。堅調な消費による下支えもありません。日本についても同様です。労働需給はかなり逼迫しているにも関わらず、体系的な賃上げには至っていません。これまで見られた労働需給の逼迫と賃金の関係は、標準的な理論や計量経済学的モデルの根拠となってきましたが、今はその関係がみられません。

石油価格は、過去2年間で1バレルあたり約100ドルから約40ドルへと大幅に下がりました。このことは消費者と企業にとっての強力な後押しとなり、消費や投資が伸びるはずだというのがこれまでの一般的な見方でした。石油価格が低下すれば世界経済は成長すると考えられていましたが、実現していません。

もう1つ重要なのは、低金利と資本設備投資の関係です。長年にわたって低金利が続いていますが、大々的な投資は行われていません。この点についても、計量経済学的関係やモデルを支えてきた、金利と資本設備投資の従来の関係ではうまく説明できません。

さらに、日本を含む数多くの国が通貨安であったにもかかわらず、従来の為替レートと輸出の関係に基づいて考えられるほどには、輸出の大幅な伸びにはつながっていません。

世界経済の成長エンジン

米国はこれまで世界の成長エンジンでした。ドル高によって米国の輸入が増加し、輸出主導型経済のGDP成長を支える基盤となっています。

2014年には典型的な成長パターンが見られました。堅調な消費に加え、固定投資も好調でした。ドル高の場合は米国の輸出が減少するため、通常であれば純輸出が大きく足を引っ張ることになります。2015年にかけては、特に投資など、一部の成長エンジンが後退してしまいまいした。米国などの国では、過去のデータに示されるような投資と低金利の体系的な関係がまったくみられません。米国の投資パフォーマンスは他の国より好調ですが、それでも本来の力強さは達成できていません。

たとえば、現在の景気循環における投資パフォーマンスを過去の循環と比較した場合、米国は、通常の環境であれば当然達成すべき水準を10〜15ポイント下回っている状態です。このことは、大量の資本ストックが老朽化していることを示唆しており、本来であれば投資意欲は高まっているはずなのですが、実際はそうなっていません。2015年第1四半期には純輸出が大きく足を引っ張る形で米国のGDP成長率が落ち込みますが、その分、他の国が恩恵に浴すると予想していました。たしかに、2015年第4四半期には米国のGDPが0.5ポイント低下したため、米国の成長は海外にある程度波及しましたが、これまでのように、世界の景気循環から米国が真っ先に回復し、各国の回復を後押しするような状況ではありませんでした。このような理由の1つは、世界全体のGDPに占める米国の割合がかつての50%から30%程度に低下したことです。また、米国の消費は米国の経済成長に大きく寄与していますが、かつての水準には戻っていません。さらに、米国では賃金が上昇していません。中間層の購買力はいまだ回復しておらず、中間層全体の購買力は実質ベースで約20年前から変わっていません。

中国は長年にわたり、世界経済の成長エンジンを担っています。多数の建物を建設し、数多くの労働者が農村から都市、工場へと移動、所得が上昇し、中間層を形成しています。しかし最近では、中国の成長は製造業からサービス業への移行期を迎えています。サービス部門は実際に拡大し、成長率は8%台に達しているようです。しかし、私たちは金融以外のサービス部門に注目したいと思います。その理由は、中国で行われている金融取引は不動産部門や国有企業を支えるものであり、新しいタイプの雇用や新たな消費パターンを創出するようなサービス業ではない、という懸念を抱いているからです。金融部門を除いたサービス業に注目すると、成長の移行期が実際に起こっているのか判断が難しいところです。製造業からサービス業、そして、モノ中心の投資から消費への流れは確かにあるのですが、順調に進んでいるとはいえません。中国で起きているリバランスは、世界経済の成長エンジンというよりは、商品価格の下落やそれによる商品輸出業者への影響を通じ、世界経済の足かせとなっています。輸出業者が購買力を失い、貿易が低迷して足を引っ張り、特に、輸入国において通常のような形で商品価格の下落が波及しない場合、顕著にみられます。

中国がすでに世界経済の成長エンジンではない理由は、実体経済だけでなく金融経済にもあります。中国が金融市場の不安定化に関係しており、世界市場の足かせとなっています。人民元の対ドルレート以外にも重要な要因はありますが、2015年8月の小幅な切り下げ、そしてその後、通貨バスケット制への移行を模索したことを受け、金融市場は混乱に陥り、これが株式市場全体にも波及しました。外貨準備高の減少についても、中国当局の真意が理解しづらく、これが市場の不安定化に少なからず影響しています。

さらに、商品市場の変化の度合いを示す指標として、大型船舶の外航運賃指数であるバルチック海運指数(BDI)があります。2015年にBDIが低下した理由の1つには、直近で運賃が高かった2011年に建造された船舶が稼動を開始したこともありますが、やはり需要の低迷を示唆しているといえます。

構造的要因

世界経済の成長見通しが引き続き不透明であるという見方は、循環的要因だけではなく、構造的要因にも基づいています。世界貿易の大幅な減速を懸念しています。世界貿易の成長率が世界全体のGDP成長率を下回ったのは、1973年以降5回しかありません。その5回はいずれも世界全体の成長環境の大幅な鈍化を伴っていました。世界貿易の伸びと世界全体のGDP成長率の下降トレンドは連動しているのです。グローバル・バリュー・チェーンの変化と投資不足が原因であり、2つとも構造的な要素を含んでいると考えます。

大規模な金融緩和策が実施されているにもかかわらず、2%のコアインフレ目標を達成している国はないのが現状です。米国や日本のように労働需給が比較的逼迫している国においても、労働者1人当たりの賃金はあまり上昇していません。ユーロ圏では労働需給の緩みがかなりみられます。OECDの最終的な見通しにおいても、ユーロ圏の失業率は2007年当時より2ポイント以上、上昇するとみています。ユーロ圏で賃上げが実施されたとしても、それは労働需給の緩みによるものではなく、たとえばドイツの最低賃金引き上げなどによるものでしょう。労働需給の逼迫化が賃金上昇やコアインフレ率の上昇につながれば良いのですが、中心的要素である賃金上昇は実現していません。

金融面の問題

金融面も主な不安の種です。金融面の問題は、政策ツール3つすべてを用いる政策対応に影響を及ぼすからです。

今年に入ってから見られた相場の下落は、本来のファンダメンタルズより行き過ぎたものだったのか、もしくは金融市場が本来のファンダメンタルズに追いつきつつあることを示しているのでしょうか。金融市場では見通しについての見直しが行われています。2015年の8月、9月、10月の間の下落は現在もある程度、続いています。2016年2月にかけての下落は、その後上昇に転じたとはいえ、資産価格は2015年上半期の平均を割り込みました。さらに、世界経済の成長への懸念がさまざまな株式指数に織り込まれる中、株価だけではなくボラティリティ指数にもこうした動きが反映されています。金融市場では、今後の動向に対する不透明感がかなり広がっています。

むしろ、金融市場の安定性が新興市場に与える影響について懸念を抱いています。金融市場の不安定性は株価の動向や実効為替レートの急落、ソブリン債のスプレッド拡大に表れました。このスプレッドはリーマンショック当時の3分の1にまで接近しました。

新興国の株式市場、外為市場、ソブリン債市場のスプレッドが逼迫すると、国内市場だけでなく海外市場も脆弱になってしまいます。中国やトルコ、ブラジルなどでは近年、融資会社がかなり増えました。

対外債務について重要な問題は通貨です。為替レートの変動に左右される、外貨建て債務と自国通貨建て資産との通貨ミスマッチです。国内・国外のエクスポージャーについては、トルコ、ブラジル、おそらく中国や南アフリカなど一部の国は、他の国のリスク水準をやや上回っています。実際、こうした国では、対外エクスポージャーはGDP比で見ると1997年、2001年当時より大幅に縮小しました。当時と比べて銀行システムのマクロプルーデンスが大幅に重視されるようになり、銀行、企業、政府の間に負のスパイラルが生じることはないでしょう。

政策協調の必要性

政策担当者は、実体経済と金融経済の両面から新たな方策を講じる必要があります。世界経済の成長率3%、ユーロ圏1.5%、そして日本の場合、これを下回る低成長を続けているわけにはいきません。このような低成長を続けている国は、政策担当者の公約を果たすことができないからです。若年層は就業とより豊かな生活を約束されました。しかしながら、欧州では若年層の失業率が25%で、約束は守られていません。世界経済がこんなに低成長だと、高齢層に年金を支払い続けるという約束も守ることができません。政府が債務履行できないほどの低成長な国もあります。世界経済の成長率を引き上げるためには、3つの政策手段すべてを相乗的に活用する政策協調が重要です。多くの国においてほとんど金融政策しか用いられていないのが現状です。

2015年12月に米国のFF金利が0.25%と小幅ながら引き上げられたことについて、誤りだったという声があります。あの時点で連邦準備制度理事会(FRB)が0.25%利上げしたことは、適切だったと思います。実体経済を支える一方で金融の安定を図るというバランスの取れたものでした。小幅な利上げであったにもかかわらず、市場における今後への期待は著しく後退しました。

では、その他の主要国の政策動向はどうなっているでしょうか。ほとんどの国では財政緊縮策を取ろうとしています。また、多くの国では金融政策と財政政策が両輪としてうまく機能していません。今こそが、適切な財政政策を実施すべきタイミングだと考えるのはなぜか。それは、超低金利だからです。このため、通常言われている以上に財政的余地はあると考えています。

協調的な財政政策を実施する、たとえば、OECDの全加盟国がGDP比0.5%の公共投資を行うと仮定します。公共投資は乗数効果の高い事業であり、多くの国においてハード、ソフトいずれかのインフラ整備が行われます。この場合、OECD加盟国だけが財政拡張政策を実施し、BRICS各国は実施していませんが、それでも波及効果の恩恵を得られます。政策協調によって、参加する当事者すべてが、ある程度の恩恵を受けられる波及効果も見込めます。

多くの国は財政面の余地がないことを懸念しています。しかし、乗数が1を越えていれば、対GDP比の債務残高でみられる財政の持続可能性は実際のところ、改善します。現時点で財政赤字であっても、選別された公共事業と構造改革の適切な組み合わせに基づいていれば、結果として持続可能性の改善につながる可能性があります。

構造改革は財政・金融政策とセットで行う必要があります。構造改革の速度はこれまでのところ不本意なものであり、とても野心的だとはいえない状況です。

過去12年間、各国で行われたさまざまな構造改革について評価を行ってきました。先進国では2007年〜2010年の間に平均して20%の勧告が実施され、効果が見られました。2011年、2014年の危機の際には平均で約40%の公約が実施され、効果を上げました。2015年には各国ともに公共事業やその実施への意欲が失われつつあります。乗数が1を超えるには、構造改革が欠かせません。3つの政策手段すべてを用いなければ、効果は得られません。

欧州連合(EU)が成長エンジンとして注目すべき地域と考えられない理由はなんでしょうか。EUの場合、各国の財政再建の主な手段は投資でした。ユーロ圏の投資規模は2007年の水準を約20%下回っており、当面、上向くとは考えられません。事業承認数も多くありません。ユンケル欧州委員会委員長が提唱した投資計画は期待外れな状況です。この投資計画は域内のネットワーク産業、つまり、通信やエネルギー、輸送といった部門への投資を重視しています。投資が定着し、民間部門が活性化される唯一の道は規制面での調和を図ることです。これはユンケル計画の目玉ですが、この重要な要素についてはほとんど進展が見られません。さらに、銀行システム内での負債圧縮も進んでおらず、このため欧州中央銀行(ECB)を通じて供給しされている資金は銀行システム内にとどまってしまい、たとえば米国と比較すると負債圧縮は進んでいません。最後に、ユーロ圏の不安定性について重大な懸念を抱いていることを申し添えておきたいと思います。

まとめると、貿易や投資、賃金の伸びが低迷しているため、世界経済の成長は横ばいとなっています。新興市場は商品や輸出に依存していたため、低迷しています。原油安や低金利に支えられた景気回復は予想を下回っています。波及経路がうまく機能していません。私たちは下方リスクを懸念しています。世界経済の成長を拡大しリスクを削減するためには、協調的で、より野心的な行動が必要です。

質疑応答

Q:

お話では3つの政策の組み合わせが重要だという点を強調しておられました。これはいわゆる世界版アベノミクスともいえます。非常に素晴らしいと思います。では、日本については、成長のために何が欠けていると思いますか。3本の矢による政策が進められていますが、何が日本経済の成長を妨げているのでしょうか。日本の統合的な政策は誤り、もしくは修正が必要だということでしょうか。また、乗数効果についてもご指摘されましたが、日本についてはデータがありません。日本についてのデータをご提示いただけますでしょうか。さらに、中国についてですが、この数カ月の世界的な市場の変動は主に中国の為替政策の転換や株式市場の急落などが原因だという印象を強く持っています。中国が資本流出を食い止め、為替レートの切り下げの回避にむけて十分な取り組みを行えば、世界市場は安定化すると考えられます。ご見解をお聞かせください。

A:

最後のご質問からお答えします。人民元の対ドルレートが動くタイミングと世界の株式指数の主要な動きとの間には相関性があると思います。私も為替政策や人民元のバリュエーションに関する不透明感は、世界経済の不安定性にとって重要な要因だと思います。ただ、中国の資本勘定自由化のペースを変えることが方向性として適切かどうかはよく分かりません。その理由は、変更によって一時的に改善したかのように見えるかもしれませんが、中国が資本勘定を再度開放したとたんに、また不安定になると思われるからです。あるいはそうした不安定性が中国の株式市場や銀行のバランスシートといった別の経路を通じて発現するでしょう。資本勘定をまた閉じてしまうのは正しい方向とはいえません。より明確な戦略を持ち、その戦略を伝達していくことこそ役に立つと思われます。

OECDの政策協調シナリオモデルにおける日本の財政乗数は、日本銀行の乗数よりかなり大きいです。この分析について最初に協議した際、相当多くのモデルとの比較を行いました。OECDの算出した乗数は、日本の単独行動シナリオだけでなく、日本とその他の国が政策協調を行うというシナリオを想定した場合でも、日銀の乗数より大きくなりました。それは、日本が他国との協調的な拡大政策によって大きな恩恵を受けると思われるからです。これらのシナリオでは、巨額の債務残高のため、日本は対GDP比の債務残高を大幅に削減できることになります。

世界はようやく日本に、そしてアベノミクスに追いついたのでしょうか。政策担当者はアベノミクスの考え方に追いついていると思います。個人的には、世界各国の政策担当者が、そして、日本の政策担当者も真の意味でアベノミクスの考え方に追いついて欲しいと思います。第3の矢はまだ放たれていません。現在、この第3の矢は政治的に実現可能な構造改革を模索しつつ再構成されています。最良の経済的結果を得るため実現すべきことと、政治的制約下で実現可能なこととは別です。常に両方に目を向けることが重要です。日本の事例から明確にいえることは、個々に実施されてしまった財政政策と金融政策は、不十分であり、そして今こそが第3の矢を矢筒から取り出し、放つときなのです。すでに財政・金融政策の余地はないからです。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。