独立行政法人経済産業研究所における障害を理由とする差別の解消の推進に 関する対応要領        平成28年3月28日        通 達   第24号 改正 令和6年3月14日 令和6・3・13独経研第6号  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下 「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推 進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即し て、障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を次のように制定する。  (目的) 第1条 この要領(以下「対応要領」という。)は、法第9条第1項の規定に基づき、ま た、基本方針に即して、法第7条に規定する事項に関し、独立行政法人経済産業研究所 (以下「研究所」という。)役員及び職員(非常勤職員及び派遣労働者を含む。以下「役 職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めることを目的とする。   (不当な差別的取扱いの禁止) 第2条 役職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、 障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の 心身の機能の障害(難病等により起因する障害を含む。)をいう。以下同じ。)を理由と して、障害者(障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限 を受ける状態にあるもの。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、 障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、役職員は、別紙に定める留意 事項に留意するものとする。  なお、別紙中、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、 法に反すると判断されることはないが、障害者基本法の基本的な理念及び法の目的を踏 まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ)。  (合理的配慮の提供) 第3条 役職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合におい て、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとなら ないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施 について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければなら ない。これに当たり、役職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。    (監督者の責務) 第4条 役職員のうち、役職員を監督する地位にある者(以下「監督者」という。)は、前 2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲 げる事項を実施しなければならない。 一 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その監督 する役職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせる こと。 二 障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出 等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 三 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する役職員に対して、合理的配慮の提 供を適切に行うよう指導すること。 2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対 処しなければならない。  (服務上の措置) 第5条 役職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は過重な負担がないにも関 わらず合理的配慮の不提供をした場合、その態様等によっては、信用失墜行為等に該当 すると認められるときは、懲戒処分その他の措置に付されることがある。  (相談体制の整備) 第6条 研究所に、その役職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族 その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、次に掲げる相談窓口に総務グルー プを指名する。 2 相談等を受ける場合は、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、 ファックス、電子メールに加え、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要と なる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 3 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者 間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。 4 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。    (研修・啓発) 第7条 障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、役職員に対し、法や基本方針等 の周知や、障害者から話を聞く機会を設けるなど必要な研修・啓発を行うものとする。 2 新たに役職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な 事項について理解させるために、また、新たに監督者となった役職員に対しては、障害 を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、 研修を実施する。 3 役職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、性別や年齢等にも配慮しつつ障害 者へ適切に対応するために必要なマニュアル等により、意識の啓発を図る。 附 則(平成28・3・18独経研第7号)  この通達は、平成28年4月1日から施行する。 附 則(令和6・3・13独経研第6号)  この通達は、令和6年4月1日から施行する。 別紙 研究所における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方   法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会 の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対 しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止し ている。なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障 壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理 由とする不当な差別的取扱いに該当する。  また、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当 な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い (いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害 者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバ シーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当た らない。  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又 は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことであ る点に留意する必要がある。   第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種 機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、 その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。研究所においては、正当な理由に 相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の 趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、 財産の保全、損害発生の防止等)及び研究所の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等 の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  役職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものと し、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、役職員と障害者の双方が、お互いに 相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。 第3 不当な差別的取扱いの例   正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例及び正当な理由があ るため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例は以下のとおりである。なお、 記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこ と、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえ て判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場 合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留 意する。 (正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例) ○ 障害があることを理由として、一律に窓口対応を拒否する。 ○ 障害があることを理由として、一律に対応の順序を後回しにする。 ○ 障害があることを理由として、一律に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供 等を拒んだり、資料等に関する必要な説明を省いたりする。 ○ 障害があることを理由として、一律に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○ 事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害があることを理由とし て、一律に来所の際に付添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がない にもかかわらず、障害があることを理由として、一律に付添い者の同行を拒む。 ○ 障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて 考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否する。 ○ 業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を 行う。 ○ 障害があることを理由として、障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接 遇の質を下げる。 (正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例) ○ 実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれ る障害特性のある障害者に対し、当該実習とは別の実習を設定する。(障害者本人の安全確 保の観点) ○ 車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための 対応を行う。(研究所の損害発生の防止の観点) ○ 研究所の手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な 範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等 を確認すること。(障害者本人の損害発生の防止の観点) 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配 慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又 は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合に おいて必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」 と定義されている。  法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又 は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要 としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないと きは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施につ いて、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障 害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ず るものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益 を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障 壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないも のである。 2 合理的配慮は、研究所の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範 囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等 の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質 的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その提供に当たってはこれらの点に 留意した上で、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のため の手段及び方法について、当該障害者本人の意向を尊重しつつ「第5 過重な負担の基 本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話によ る相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要がある。建 設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可 能な対応案を障害者と役職員が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努 めることが重要である。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じてい る対策や、研究所として対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じ て相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考 えられる。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わ り得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配 慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏ま えた対応が求められることに留意する。障害者との関係性が長期にわたる場合等には、 その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・ 長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必 要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実 物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミ ュニケーションを図る際に必要な手段(手話通訳・要約筆記等、通訳を介するものを含 む。)により伝えられる。  また、障害者からの意思表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思表明が困難 な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支 援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴って いない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を 必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して 適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努 めることが望ましい。 4 合理的配慮は、不特定多数の障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリ アフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」を 基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。 したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なること となる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長 期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要 である。  なお、研究所ウェブアクセシビリティ方針においては、研究所公式ホームページが、 JIS X8341−3:2016に基づき多くの利用者に確実かつ正確に情報伝達さ れるよう、JIS X8341−3:2016の等級AAに準拠することを目標として いる。   第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに拡大解釈するなどして法の趣旨を損なう ことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・ 客観的に判断することが必要である。  役職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明する ものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際には前述のとおり、役職員と障 害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、 代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 ○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 第6 合理的配慮の例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別 性の高いものであるが、例としては、次のようなものがある。  なお、記載した内容はあくまでも例示であり、必ず実施するものではないこと、記載さ れている例以外であっても合理的配慮に当たり得るものがあることに留意し、障害者の特 性に配慮する必要がある。 (合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の例) ○ 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを 渡すなどする。 ○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分 かりやすく教える。 ○ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・ 左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 ○ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。 ○ 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難であ る場合に、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休 憩スペースを設ける。 ○ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、役職員が書類を押 さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 ○ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚 障害のある方に対し、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。 ○ イベント会場において障害のある子供が発声やこだわりのある行動をしてしまう場合 に、保護者から子供の特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落 ち着かない様子のときは個室等に誘導する。 ○ 視覚障害のある方からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じ てトイレの個室を案内する。その際、同性の役職員がいる場合は、障害者本人の希望に 応じて同性の役職員が案内する。 ○ 視覚障害のある方との衝突をさけるため、施設内での歩きスマホをしないこと、移動 の妨げになるような執務室エリアのレイアウト(配線・備品等)にしないことなど、全 役職員が思いやりを持った行動を心がける。 (合理的配慮に当たり得る情報の取得、利用及び意思疎通への配慮の例) ○ 筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字、触覚による意思伝達等のコミュニケーショ ン手段を用いる。 ○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号 等が異なり得ることに留意して使用する。 ○ 視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよ う電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ○ 駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝 達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 ○ 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的 に説明する。 ○ 障害者から申出があった際に、2つ以上のことを同時に説明することは避け、ゆっく り、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、 なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間ではなく午前・午後 で表記する等の配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。また、紙等に書 いて伝達したり、書面を示す場合には、ルビを付与した文字を用いたり、極力平仮名を 用いたり、分かち書き(文を書くとき、語と語の間に空白を置く書き方)を行ったりす る。 ○ パニック状態になったときは刺激しないように、また危険がないように配慮し、周り の人にも理解を求めながら、落ち着くまでしばらく見守る。また、パニック状態の障害 者へ落ち着ける場所を提供する。 ○ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害の ある委員や知的障害のある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を 行う。 ○ 会議の進行に当たっては、委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲 での配慮を行う。 ○ 防災関係などの館内放送について遅滞なく聴覚障害のある方にその内容が伝わるよう に周りの役職員が能動的に情報提供を行う。 ○ 障害者職場定着アドバイザーを雇用し、障害者の状況把握及び体調配慮のための面談 を行う。 (ルール・慣行の柔軟な変更の例) ○ 順番を待つことが苦手な障害者に対し、順番を教えたり、周囲の者の理解を得た上で、 手続順を入れ替えたりする。 ○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者 の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、それらに近い席を確保する。 ○ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○ 経済産業省等の敷地内の駐車場等において、障害者の来所が多数見込まれる場合、通 常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更することを駐車場等の管 理者と可能な限り調整する。 ○ 入館時にICカードゲートを通過することが困難な場合、別ルートからの入館を認め ることを施設の管理者と可能な限り調整する。 ○ 障害者が多数で会議等に出席する場合は、使用するエレベーターを専用運転にするこ とを施設内の管理者と可能な限り調整する。 ○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該 障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 ○ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを 前提に、障害のある委員の理解を援助する者及びコミュニケーションを支援する者(手 話通訳者・要約筆記者等)の同席を認める。 ○ オフィスの中で固定席を持たず、業務の性質に応じて自在に場所を選んで働くフリー アドレスを実施する場合には、障害者にとって負担になる可能性もあることから一部で 固定席を設ける等柔軟な対応を認める。 ○ 役職員向けのE−ラーニングテストを実施する際、障害者向けの問題を作成する等の 柔軟な対応を認める。  また、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び合理的配慮の提供義務 に反しないと考えられる例としては、次のようなものがある。なお、記載されている内容 はあくまでも例示であり、合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては、個別 の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であることに留意する。 (合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例) ○ 障害者から、試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出が あった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を 行うことなく一律に対応を断ること。 ○ 障害者から、イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何か あったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断るこ と。 ○ 電話利用が困難な障害者から、電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求 められた場合に、マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とす ることとされていることを理由として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の 代替措置を検討せずに対応を断ること。 ○ 介助を必要とする障害者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があっ た場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受 講者である障害者本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助 者の同席を断ること。 ○ 自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板 書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保 などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。 (合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例) ○ 障害者から、事務の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提 供を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点) ○ 抽選申込みとなっている講座への参加について、障害者から、抽選申込みの手続きを 行うことが困難であることを理由に、講座への参加を事前に確保しておくよう求められ た場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供 を受けるためのものであることの観点) ○ イベント当日に、視覚障害のある方から役職員に対し、イベント会場内を付き添って ブースを回って欲しい旨頼まれたが、混雑時であり、対応できる人員がいないことから 対応を断ること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)